「明治、11月から牛乳3年半ぶり値上げ」「今年2度上がったコーヒー豆が10月も」「年内に値上げの食品2万超」…。連日、物価高の報道一色で、嫌気がさすばかりだ。「どの商品が、いくら値上がりするのか」よりも、気になるのは政府の対抗策だ。
そこで本紙では、岸田政権が物価高対策に具体的にどう取り組んでいくのかをまとめてみた。
看板で終わらせるな!「新しい資本主義」大企業の儲けで、中小企業にテコ入れを
政府が9月9日の会合で決定した物価高の追加策を見ていこう。
■非課税世帯に5万円
まずは、この物価高に大きな負担を受けている高齢者が多い住民税非課税世帯に、1世帯当たり5万円を給付する。大正となるのは全体の4分の1となる約1600万世帯で、年内にも給付を開始する。
高齢世帯だけでなく、「全世帯に支給すべきだ」などの声も上がっているが、政府は「緊急に対応する必要がある」と各家庭に迅速に届ける意向だ。
政府の物価高対策のポイント
低所得世帯向けに1世帯あたり5万円の給付金
ガソリン補助金を12月末まで延長し、段階的縮小案は見送る
輸入小麦の政府売り渡し価格を10月以降も据え置く。これにより20%の値上がりを回避
農家が負担する10~12月期の飼料コストを現状と同程度の水準に維持
地方自治体が対策に充てる地方創生臨時交付金に、新たに6000億円の枠を設ける
■ガソリン高には
9月末が期限だった燃料油元売りに対するガソリン補助金も、年末まで延長。基準価格として168円を維持する方向だ。
このガソリン高騰だが、本当はトリガー条項の凍結を解除するのが一番いい。本来はガソリンが3カ月連続で1リットル160円を超えると、ガソリン税の上乗せ分25・1円の課税を停止するトリガー条項という仕組みがあるが、現在は凍結されている。凍結を解除すれば消費者が購入するガソリンの小売価格が直接約25円安くなるからだ。だが、岸田首相に影響力を持つ財務省は反対し、期限付きの補助金に落ち着いている。
■食糧品への負担軽減
パンや麺類の値上げを抑えるため、政府が一括購入している輸入小麦の売り渡し価格を10月以降も据え置く。家畜の餌となる飼料は、農家が負担する10~12月期も現状と同程度の水準に維持する。
■子育て世帯や中小企業
地方自治体が対策に充てる地方創生臨時交付金には新たに6000億円の枠を設け、子育て世帯や中小企業の支援などメニューを示して活用を促す。ちなみにこの難しい名前の交付金。イメージしやすいように過去にどんなものに使われているかというと、大阪での実績を見ると、学校給食費の無償化や、飲食店の営業時短協力金、観光キャンペーンで府内宿泊者へのポイント還元などがあたる。
政府はこれらの支援を迅速に届けるため、今月下旬に、新型コロナ対策とあわせて、3兆円半ばのコロナ・物価予備費を措置する。
岸田首相は総合経済対策について、「物価高に加え、看板政策『新しい資本主義』を前に進めるため」と説明。
庶民は苦しくても企業利益は過去最大?
値上げラッシュの庶民感覚とズレを感じるのが、大企業を中心に利益が伸びていることだ。
「円安で企業は苦しいのでは?」と思いきや、財務省が発表した4~6月期の法人企業統計によると、全産業の経常利益は前年同期比17・6%増(28・3兆円)と、四半期では過去最大に。企業の内部留保も初めて500兆円を突破した。
背景にはあるのは円安の恩恵だ。利益拡大は輸出型の大企業に集中しており、逆に輸入型の企業は輸入コストが増えて大ダメージを受けている。資金の乏しい中小企業は事業継続の危機に直面しており、政府は「所得再配分」から成長戦略を推進する「新しい資本主義」を大胆に遂行すべきだ。