新しい紙幣が7月3日から発行される。新しいデザインは、一万円札が「近代日本経済の父」と呼ばれる実業家の渋沢栄一、五千円札は女性の地位向上に貢献した津田梅子、千円札は破傷風の治療法を開発した細菌学者の北里柴三郎となる。
新紙幣の発行で、銀行のATMは発行と同時に新旧紙幣の両方に対応することになる。現行紙幣もこれまで同様、使用できる。
〝タンス預金の循環〟が狙い!?
「現行紙幣が使えなくなる」などの詐欺にご用心
世界初 ホログラム技術
今回、なぜこのタイミングで新紙幣を発行するのか。
まず、最初に挙げられるのが偽造防止だ。政府はほぼ20年おきに、最新技術を駆使した新紙幣を発行している。
今回の紙幣も世界で初めて最先端のホログラム技術を導入。紙幣をななめに傾けると肖像が立体的に動いて見えるほか、「すかし」は肖像を映し出すだけでなく、紙の厚みを微細に変え、高精細な模様を施すなど偽造防止技術を採用している。
ATMや券売機 新紙幣へ対応
では、新札で銀行ATM(現金自動預け払い機)や、鉄道券売機、自動販売機は使えるのか。
中小の飲食店などでは「新紙幣に対応する券売機の設置は費用がかかりすぎる」(大阪市北区の麺類店)と対応が遅れそうだ。
一方で銀行のATMは、発行と同時に旧紙幣と新紙幣の両方に対応することになる。また、駅の券売機について鉄道各社は、駅や地域によって時期は異なるが、新紙幣での更新作業を順次進めている。
ただ、飲料の自動販売機については「新紙幣の流通の状況をみながら順次、新紙幣への対応を進める」(日本自動販売システム機械工業会)としており当面、新紙幣が使えない自販機が残りそうだ。
〝現金大国〟日本でキャッシュレス加速?
政府は他国に比べ遅れている国内のキャシュレス化に力を入れているが、「狙いは100兆円を超えるとみられる〝タンス預金の循環〟」と指摘するエコノミストは多い。
事実、国内の家計金融資産のうち約54%は現金と預金。アメリカの約13%、ヨーロッパの約34%に比べると割合は極めて高い。
政府は「貯蓄」から「投資へ」を呼びかけており、自宅に保管している旧紙幣と新紙幣を交換するタイミングで、その資産を循環させる狙いもありそうだ。
ただ、財務省では「新紙幣と現行紙幣はまったく同一サイズで、発行後も現行紙幣はこれまで同様に使用できる。現行紙幣が使えなくなるため回収する、というような特殊詐欺に注意を」と呼びかけている。