5月のGWはドル円相場が緊迫した。「34年ぶりの円安」が加速し、連休中に1ドル160円をつけ、ついに政府・日銀が大規模な為替介入を行ったのだ。市場を牽制する「口先介入」を繰り返していたが、4月29日と5月2日に〝実弾介入〟が行われ、一時151円台の円高となった。実弾介入は最終手段ともいえ、「使えば使うほど効果が薄れる」といわれているが、今回は見事にその効果を発揮した。
そもそも円安とは、〝何に対して安いのか〟
1ドル100円だったものが1ドル200円になるとそれだけ多くの円を支払わなければならない。コロナ前の2020年は1ドル109円だったので、当時の感覚からすると155円台の現在は3割引きのイメージ。今まさに外国人観光客が日本に押し寄せている理由の一つだ。つまり「ドルに対して安い」ということだ。
なぜ、ドルなのか。それはドルが世界の「基軸通貨」だからだ。円やユーロ、ポンドは国際通貨で、もちろんドルも国際通貨であるが、同時に世界唯一の「基軸通貨」でもある。誰がそう決めたのか。誰かが決めたわけでもなく、世界で一番使われている通貨だからだ。ちなみに、貿易立国である日本の輸出製品は5割、輸入製品は7割が〝ドル建て〟で貿易が行われている。日本は為替相場に敏感にならざるを得ないのだ。
新ニーサで円安加速?
一方、今年から始まった新ニーサで円安が進みやすいという声もある。今、新ニーサを始めた人に人気なのが、「全世界株」や「全米株」といった海外の投資信託インデックスだ。つまり、海外の投信を買うということは、一旦円を売って、ドルを買うことになる。4月の買い越し額は約9000億円で、1月からの合計額は4兆円を超えた(財務省より)。これは毎月1兆円の円売りが行われていると捉えることもできる。世界規模の取引が行われている為替相場の中で1兆円は決して多い数字ではないが、長期投資を基本としているので今後もこの傾向が継続し増加していくことを意味する。
政府は、企業が稼いできたドルを円に替えると減税の対象とする「レパトリ減税」の導入を検討し始めている。つまり、円転するメリットを設け、過度な円安を防ぎたいという意思が感じられる。
一般的に為替相場は、「2国間の金利差」で決まる。日米の政策金利の動向を見ると、米国は5月発表のCPI(インフレ率)が下振れし、インフレ懸念が減退。年2回の利下げ予測へ。一方、日本はこの3月に17年続いた「マイナス金利」を解除した。市場は夏ごろに何かしらの金利政策があるという見方もしている。「株価は思惑で買って事実で売る」市場は、実際に実施されることよりも「そう思われていること」が先に反映される。年内、米国は金利を下げ、日本はわずかであるが利上げするかもしれないという思惑で、円高傾向という声も。
今後の日米株価は?
一般的に利上げ観測がある国は、株安に向かいやすい。日本はこのまま物価上昇率2%を維持して利上げしても耐えられる体力があるのか、円高時の大企業の決算も問われるだろう。米国株は今のところ「悪い経済ニュース=利下げ期待=株価には良いニュース」であるので株高という見方もある。