鋭い視点と粘り強い取材で現代ニッポンに切り込むカンテレの「ザ・ドキュメント」。2月9日㈮深夜1時25分からは、1月に死刑判決を受けたばかりの青葉真司被告(45)の実像に肉薄する「生かされた理由~京アニ事件の深層~」を放送する。
5年前の夏に起きた京都アニメーション放火殺人事件で、一審の京都地裁では青葉被告に殺人罪等で死刑判決が下された。36人の命を奪い、32人が重軽傷を負い今も後遺症に苦しむ人もいる戦後最悪の事件。
昨年9月放送の同じ「ザ・ドキュメント」枠で、青葉被告の全身やけどの治療にあたった上田敬博医師(現職:鳥取大学医学部附属病院・救命救急センター教授)に密着した「猛火の先に~京アニ事件と火を放たれた女性の29年~」を制作したカンテレ前京都支局長の原佑輔ディレクター(37)から、この事件のメイン取材を引き継いだのが宇都宮雄太郎・現京都支局長(31)だ。
昨年9月から今年1月までの全23回の公判全てを傍聴取材。元主治医の上田医師と事件で妻晶子さんを亡くし遺族として被告人質問に立った寺脇譲さんに密着し、2人の思いを丁寧に聴き取った。
また公判の合間を縫って、青葉被告が暮らした埼玉、茨城両県に足を運び、幼少期からの足跡を1カ所ずつ訪ね彼自身だけでなく取り巻く人々や生活環境を丹念に掘り起こした。
一般的に「自身のアイデアを京アニに盗まれた」との勝手な妄想に支配された理不尽な犯行動機、と思われていた青葉被告の心の動きや生き様が次第に浮かび上がる。
宇都宮支局長は「幼少期から定時制高校、そして社会に出て彼が歩んだ生き方と心の変遷を知りたかった。しかし会って取材に応じて下さったり、電話でお話しを聞かせて頂けた方は接触を試みた対象者の約1割程度。残りの方は〝関わりたくない〟という気持ちが強く、証言を積み重ねるのに時間と根気を要した。公判の被告人質問では想像以上にしっかりと話す青葉被告を見て、質問にはキチンと受け答えしていた印象を受けた。今後は控訴審に舞台は移るが、引き続き関わっていきたい」と話している。
重大事件の一審有罪判決直後を、ピンポイントで狙い澄ましたテレビ報道マン渾身(こんしん)の作品。
(畑山博史)