ステルス増税か? 一人1000円の森林環境税 来年度開始

 会社員や自営業者など一人年間1000円を徴収する「森林環境税」(国税)が2024年度から導入される。新税は温室効果ガスの排出削減目標の達成や災害防止などを達成するために、住民税に上乗せされる形で納税者から直接徴収されるカタチだ。納税開始までは19年度から、先行する形で国庫から交付金として配分が始まっているが、国民への浸透度が低く、制度への理解と効果的な運用が行われているのか、検証が必要だ。

森林環境税 来年度開始
※総務省のHPから

どう使われる 620億円の「森林環境税」 
東日本大震災の復興特別税の〝転用〟?

COP21で採択された「パリ協定」の枠組み

 「森林環境税」は2015年にフランスで開かれたCOP21で採択された「パリ協定」の枠組みのもと、温室効果ガスの排出削減目標の達成や災害の防止などを達成するため、19年に法律が成立。24年度からは国税として、国内に住所がある人から1人1000円、住民税に上乗せする形で「森林環境税」が徴収される。納税者を約6200万人とすると、税収は1年で620億円に上る。その税収は全額が「森林環境譲与税」として全国すべての都道府県や市町村に配分される。

財源は手放なさない財務省

 「財務省は補助金は出しても一度手にした財源は手放さない」と言われているが、24年度から徴収する「森林環境税」は23年度で終了する東日本大震災の復興のために定められた住民税の復興特別税1000円(道府県民税500円+市町村民税500円)と同額。

 政府としては、復興特別税を引き継いだ形で同年度から「森林環境税」として国民から徴税するが、サラリーマンや自営業者らの肌感覚は「温暖化ガスの排出削減や土砂災害防止、水源保全は大切。だけど、復興特別税を引き継いだ形で徴収されるの?」と国民への周知が低い〝ステルス納税〟だ。

たかが1000円、されど1000円

 日本は、国土面積の約7割を森林が占め、世界でも有数の「森林大国」。それでも日本の森林環境は木材価格の低迷や林業就業者の不足などが深刻な課題となっている。

 国は新しい税の導入について「森林を守ることは、国土の保全や水源の保護など国民に広く恩恵を与える」と説明。交付金は間伐や人材育成・担い手の確保、木材利用の促進などの費用に充てるのが目的だが、制度が始まった19年度からの3年間で、全国の市町村に配分されたのは約840億円。交付金の47%にあたる394億円が活用されていない。

 22年度は500億円(市町村440億円、都道府県60億円)が交付され、399億円が活用されたが、それでも101億円が使われずに基金などに積み立てられた。

 有効に活用されていない一因として指摘されているのが税金の配分方法だ。

 森林環境譲与税の各自治体への配分は、「私有林や人工林の面積」に応じた配分が50%、人口に応じた配分が30%、林業従事者数に応じた配分が20%という。このため、森林がなくても、人口が多い自治体には多額の譲与税が配分されることになる。

大阪府、独自の「森林環境税」を活用

 では、地元大阪ではどのように使われているのか。

 大阪府は国とは別に独自の「森林環境税」(年額300円/個人府民税均等割額に加算)を23年度まで設け、国から示された新たな知見に基づいて「森林の土石流・流木対策」を実施。また、「災害並みの猛暑から府民の健康被害を軽減する」ためとして「都市緑化を活用した猛暑対策」(約15億円)などを実施している。

 21年度、2億3622万円の譲与税を受けた大阪市は、国産木材を利用して大阪中之島美術館の整備事業や小中学校等における・椅子、防災用備品の整備、普及啓発としての木育・森林環境教育に取り組んできた。

 国は各自治体に対して、支給された譲与税をどのように使ったかを、インターネットなどを使って公表するよう求めている。個人にとっては「たかが1000円、されど1000円」ともいうべき貴重な税金。自分が住む自治体で効果的な運用が行われているのか、関心を持つことが大切だ。