昨今の日本列島は、最高気温が３５℃を超える猛暑日も珍しくないほど危険な暑さに見舞われている。総務省消防庁が公表するデータによると、２０２３年７月時点で、約４万６千人が熱中症を理由に搬送されたという。その内、室内で熱中症になった人は約１万８千人に及ぶ。熱中症に関してはテレビなどでも「我慢せずにエアコンをつけましょう」と呼びかけている。しかしその一方で、エアコンで体調不良になっているという弊害も生じている。その解決策になりえる次世代型冷暖システムについて取材した。（森実花）
エアコンの設定温度と吹き出し温度の違いを知る
エアコンの設定温度と吹き出し口から出てくる風の温度はイコールではない。一般的なエアコンは、吸い込んだ空気を冷房時は「8～12度ほど温度を下げて吹き出す」、暖房時は「15～22度ほど温度を上げて吹き出す」構造になっている。
実際、エアコンの吹き出し口付近を風速計と温湿度計を用いて計測してみたところ、図１のような結果となった。冷房時、暖房時の両方とも、吹き出し口温度と室温の差は１０度以上あった。このような極端な温度の風が体に直接当たり続けると、人間の体温調節能力に負荷がかかり自律神経に不具合が生じる。
エアコンの風が体に直接当たったり、場所による温度ムラがあったり、それによって不快感を感じるだけでなく健康を害する人も多い。
快適さを求めた次世代型冷暖房
それに対する解決策が次世代型冷暖房F-CON（エフコン）である。F-CONとは風のないエアコン。自然界と同じ遠赤外線の輻射(ふくしゃ)効果を利用した無風・無音の冷暖房システムだ。四季を通じて常に快適な室内温度が保たれ、風や音によるストレスもない。冷風で体の一部が冷えたり、温風で顔が火照るなどの不快感もない。
環境事業・F-CON担当の渡辺光男さんは「夏場は空気中の水分をパネルが集めることによって除湿効果もあり、冬場の乾燥対策には加湿器を使う人が多いが、それこそ〝無風〟のF-CONだから乾燥もしにくく、家中快適な温熱環境を実現できる。まさに次世代型冷暖房なんですよ」とアピールする。
健康や環境にも配慮したF-CON
F-CONは風を出さないので、ホコリや花粉を巻き上げることがなく、空気が清潔に保たれる。しかも空間全体と空気の温度を調整するので温度ムラが少なく、身体への負担が少ない環境を作る。そのため、空調の風によってウイルスが拡散し、感染リスクが高まる事態を軽減することから病院、介護施設やクリニックなどの衛生環境を保たなければいけない空間にも設置されている。
また「無風・無音」により極上の癒やし空間を提供できることから、美容サロン、ホテルなどでの導入も増えてきている。実際に、自宅に導入した人の声として、「子どもや祖父母がいるので安全面においても安心」「以前はエアコンの設定温度でよく夫婦喧嘩をしていたが今ではそんなことがなく会話も増えた」と話している。
輻射式冷暖房はエネルギー効率が高く、CO2排出量も低減できるため、環境大臣賞やジャパン・レジリエンス・アワードなど数々の賞を受賞している。
脳科学的に証明されたリラックス効果
送風によって冷却を行う従来のエアコンと違い、F-CONは遠赤外線の輻射効果を利用した無風・無音の冷暖房システム。輻射は自然界における加熱・冷却と同じ原理で、冬は日なたぼっこをしているような暖かさを、夏には洞窟にいるような涼しさを感じられるのが「風のない冷暖房」の良さだ。そのため家中が自然な空気感になるような環境を実現できる。また無音であるため、ストレス軽減や睡眠の質の向上も期待できる。
総合科学誌ネイチャーグループ「サイエンティフィック・リポーツ」にF-CONが掲載され、風の有無で脳波が異なることが分かった。それにより無風・無音によるストレス軽減や集中力向上、リラックス効果が脳科学的にも立証された。
新次元の快適を体感できる
実際に、その次世代型冷暖房システムF-CONが体験できるというので新大阪にあるリセラビルに伺った。
扉を開けて一歩中に入ると、エアコンとは明らかに違う、まるで森の中に足を踏み入れたような心地よい涼しさを感じた。部屋の中を隅々まで移動してみたが、どこに行っても快適さは変わらなかった。空調音が全くしないため、静かに流れるBGMが心地よく際立っていたことも印象的だった。エステサロンも兼ねた洗練されたショールームに、F-CONのスタイリッシュなデザインが違和感なく、周りに溶け込んでいた。
渡辺さんは「言葉で説明するよりも一度体感いただければ、輻射式冷暖房がどういうものなのか、その快適さを実感してもらえるでしょう」と素敵な笑顔を見せた。
F-CONを取り入れた先にある自分の未来を想像してみてほしい。F-CONが創り出す「無風」「無音」の快適な空間で過ごす時間は、「一生もの」の価値と呼べるものではないだろうか。
