衆議院の解散から投開票までわずか16日間という極限のスケジュールに加え、大阪府知事選、大阪市長選の〝ダブル選〟も2月8日の投票日となる異例の事態に対し、運営する自治体の選挙管理委員会には混乱が広がっている。そんな中、寝屋川市(広瀬慶輔市長)は、戦後最短となる衆議院選挙の準備状況について、〝普段通りの市民の投票環境を確保する〟という強い決意のもと、前例のない工夫で難局を乗り切ろうとしている。(濱田康二郎)
職員100人体制で挑む「戦後最短」の壁
今回の選挙準備における最大の課題は、物理的な「時間のなさ」。通常、選挙事務は各市区町村の選挙管理委員会が司令塔となり、民間業者と連携するなどして進められるが、今回は「通常通りの委託」では間に合わない業務が続出している。
これに対し、寝屋川市は職員の応援体制を通常の30人から約100人へと大幅に拡充。まさに市役所総出の「マンパワー」を投入し、短期間での設営・準備を可能にした。市職員らは土、日を返上して奮闘した。
異例の事態!知事選掲示板は〝職員の手作り〟
最も象徴的だったのが、街中で見かける「ポスター掲示板」の作成。通常、これらの掲示板は専門業者に印刷を委託し、告示日までに設置される。しかし今回は、日数の短さと衆院選、大阪市長選も重なるため、業者による印刷では間に合わないことが判明した。
そこで寝屋川市が下した決断は「知事選分の掲示板を職員が手作りする」という作戦。職員たちが木製のパネルに区画番号を丁寧にスプレーで吹き込み、急ピッチで掲示板を組み上げる姿があった。〝委託が間に合わないなら、自分たちの手で作ればいい〟という、寝屋川市のあきらめない姿勢が市民の知る権利を守っている。市内全338箇所の看板を職員らが〝DIY〟で作成し、21日中には各所に掲示された。


「入場券が届かない」を逆手に取った〝チラシ全戸配布〟
さらに、有権者の手元に届く「投票所入場整理券」についても、物理的な限界に直面。通常は印刷・封入を経て郵便局が各家庭に届けるが、今回は封筒等の用意でさえ間に合わない。
寝屋川市はこの難問に対し「案内チラシ」を全戸配布するという大胆な手法を採用した。このチラシを通じて「整理券がなくても期日前投票ができる」ことを徹底周知し、整理券の到着を待たずに投票へ向かえる仕組みを整えた。本来、整理券は本人確認を円滑にするためのもの。名簿に登録されていれば免許証等の提示で投票可能。このルールの範囲でスピードを優先した判断になった。

期日前投票所は「決定からわずか4日」で開設を目指す
スピード対応は期日前投票所の開設にも表れている。通常、期日前投票所は市役所本庁舎や商業施設などに設置され、複雑なシステム設営や人員配置が必要。投票日の決定からわずか4日間のなか、知事選告示日の翌日となる1月23日から開設できるようにした。
寝屋川市が示す「自治体の底力」
寝屋川市は今回の対応について「このような状況にあっても、普段どおりの市民の投票環境の確保を目指し、諦めることなく、様々な工夫を行い、迅速に選挙準備を進めています」とコメント。広瀬市長は交流サイト「X(旧ツイッター)」で「寝屋川市では、何とか府知事選の告示日に掲示板の設置を完了できそうです。土日返上で対応してくれた職員らに感謝です。〝スピード〟を誇る本市でもギリギリでした…」と投稿した。
同市は広瀬市長が就任後、多様な働き方ができる「コアタイムなしのフレックス制」を導入し、応募が急増。育児や介護の環境下にある職員らも柔軟に働ける体制づくりを強化しながら、職員らの総残業時間も減らしてきた。柔軟な働き方改革を続けてきた結果、今回のスピード対応を実現したといえそうだ。

戦後最短という厳しい条件下で、業者任せにせず職員自らが汗をかく寝屋川市の姿は、他自治体にとっても大きな刺激になりそうだ。
