国産マツタケ大不作国産マツタケ大不作 猛暑と雨不足で入荷3分の1に

大阪市場で1㌔17万円

 今秋、国産マツタケが全国的に記録的な不作だった。岩手県三陸エリアを主な仕入れ先とする買取業者の道田昌吾さんによると、入荷量は昨年の3分の1ほど。大阪市中央卸売市場では1㌔あたりの最高値が17万円に達し、例年の3〜4万円を大きく上回った。原因は夏の猛暑と雨不足。台風が一度も来なかった影響で山の土が乾き、発生時期が遅れたという。(竹居真樹)

 「何十年も山に入っている採り手も、こんな不作は初めてと言っていた」と道田さん。沢の水が枯れ、地面が乾燥している地域も多く、キノコ全般の発生が少なかった。加えて、クマの出没も影響した。「木の実が実らず、エサを求めてクマが里に下りてきた。今年は危険を感じて山に入らなかった人も多かった」
 市場価格の高騰も異例だ。例年は初値は高く、ピーク時に安定、終盤で下がるが、今年は終盤も上昇。受注を抱える販売業者が、高くても買わざるを得ない状況だ。大阪市場の最高値17万円は、近年でも見られない水準だ。
 地元のスーパーでも国産はほとんど見かけず、店頭に並ぶのはカナダ、韓国、中国などの輸入品ばかり。「岩手の道の駅に少量置かれる程度で、地元の人でも食べられなかった」と振り返る。
 マツタケの発生は気温22〜25度が適温とされるが、年々秋の立ち上がりが遅くなり、今年は9月末からやっと出始めたという。「霜が降りると一気に終わるので、期間も短くなった。出る量も少なく、短期集中で終わってしまった」という。
 天然のマツタケは栽培ができず、雨量と気温という自然環境に大きく左右される。「(岩手は)2年前は雨が多く大豊作だったが、今年はその逆。天候にすべてがかかっている」(道田さん)
 中国地方の松林では枯死した松が再生しているエリアもあり、「いずれはまた出る」と希望を口にしたが、今年に限っては「食べられた人はごくわずか」という。
 阪神梅田本店の生鮮バイヤー、小松久聡さんは「今季のマツタケは前年に比べて3〜4割ほど高く、国産だけでは販売が難しいため、輸入品を組み合わせて展開した」と話す。
 同店では、国産と輸入の比率はほぼ5対5だったが、11月3日現在は国産の入荷がほぼ途絶え、店頭はカナダや中国産が中心になった。価格は産地や品質によって幅があり、高価なものから、100㌘あたり2000円前後の手頃な商品までさまざまという。
 一方で、「今年は高い」という声が多く、中国産など比較的安価な輸入品の動きが良かったという。国産が減った分、輸入品の販売が伸び、売上は前年を上回ったが、「贈答用よりも家庭用が中心」という。
 「クマの影響で来年以降の収穫も不安」と話す小松さん。秋の味覚の象徴がますます希少になりつつある。

今年の岩手県三陸での買付現場=10月下旬(道田さん提供)
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