「シニア分譲って何?」アクティブシニアの新たな住まい ~シニア分譲マンション市場調査~

安心で自由なシティライフを謳歌(おうか)する現代シニア

 2022年版高齢者白書(内閣府)によると、日本における65歳以上の人口は3621万人、高齢化率は28.9%と少子高齢化が加速している。また、「健康寿命」はさらに延びており、老後を心身ともにいきいきと過ごす「アクティブシニア」の増加がうかがえる。
 そんな中、シニアの新たな住まいとして注目度が高まっているのが「シニア分譲マンション」だ。不動産の専門的な分析調査を行う(株)東京カンテイの髙橋雅之主任研究員の協力の元、その現状と将来性について解説したい。

付帯施設が大きな魅力

 シニア分譲マンションについて、東京カンテイでは「①権利要件が区分所有である②敷地内にケア施設があり、高齢者に配慮した設計となっている③管理費とは別にケア関連サービスを受けるための費用条項がある」と定義付けている。意外にもシニア分譲マンションの歴史は新しく、全国でもまだ100物件ほどしかない希少なマンションだ。

 通常の分譲マンションと比較すると、高齢者が暮らしやすいようにさまざまな共用部、生活支援サービス、バリアフリー設備がそろっている。共通して見られる設備や仕様としては、バリアフリー設計のフラットフロア、全居室への引き戸の採用や手すりの設置が挙げられる。また、大浴場やレストラン、健康サポートなどの付帯設備・サービスによって、家事負担が軽減され、自由な時間が増えることや食事・健康管理などのサポートで心身の心配事の解消が期待される。このように、高齢者の安心・ 快適な暮らしをつくるのが、シニア分譲マンションの存在意義といえる。

シニア分譲マンションが支持される背景

 シニア分譲マンションは2000年代を境に急増しているが、それは前述の通り高齢者人口の増加に起因している。さらに単独世帯や夫婦のみの世帯が比率として拡大している。「出来る限り自立した生活を送りたい」「子どもには迷惑をかけたくない」という意識の変化も、第二の人生を過ごす居住先としてシニア分譲マンションを選択する動機付けになっているのだろう。

 関西については〝掛け捨て〟への抵抗がより強いのも影響している。「住むならきちんと自分の資産になってほしい」という考えから、利用権方式の有料老人ホームより所有権で資産性の高いシニア分譲マンションの人気が根強い。実際に、シニア分譲マンションの棟数が全国で最も多いのが近畿圏なのだ。

「リゾート型」から「都市型」へ

 シニア分譲マンション登場初期は、熱海(あたみ)や湘南などのリゾート地を中心に供給されていたが、最近のトレンドとして都市型にシフトしている。「都会の喧騒(けんそう)から離れて、穏やかに余生を過ごしたい」という考えから、「友人や家族と気軽に会って、ランチやショッピングなど都会のアクティビティーを楽しみたい」というライフスタイルの変化が見て取れる。

 「とはいっても、東京23区内や大阪市内中心部にシニア分譲マンションが建つことは少ない」と髙橋氏は補足する。付帯施設の充実度が売りであるシニア分譲マンションは通常のマンション以上に建築コストがかかり、販売価格に上乗せされる。そのため、現実的には都心部へのアクセスが良好な近郊に建つ物件が多い。「関西であれば、北摂や京阪エリアがそれに該当しますね」と髙橋氏は解説する。

売却や相続まで長いお付き合い

 区分所有ゆえに気になるのは、リセール時の資産性。この点に関して髙橋氏は「そもそも、投資物件のように値上がりを期待して購入するものではない。充実した共有施設での悠々自適な暮らしや日々の健康維持、何かあった時の安心感を享受できるのが最大のメリットだ」と説明する。また、市場が限定的で未熟なため、従来の不動産仲介会社では物件の価値判断は難しい。そのため、魅力をよく知る販売会社自身が「二次(中古)流通」を行うことも珍しくない。業界歴30年の専門家は「ファミリーマンションは言ってしまえば〝売ったら終わり〟。しかしシニア分譲マンションはそうはいかない。日常生活のサポートから売却や相続も含めて長いお付き合いが必要で、責任がある事業だ」と語る。

 「そういう意味ではシニア分譲マンションで実績のない会社よりも、何棟も手がけている会社の方が安心できる。実績がある会社だと設備仕様やサービスも今までの知見を生かし、より良い物にアップデートされている」と髙橋氏が付け加えてくれた。

 超高齢化社会においてシニア分譲マンションに期待される社会的役割は大きい。現時点ではまだまだニッチな市場だが、今時シニアのライフスタイルを反映しながら、さらなる拡大を果たしていくのではないだろうか。

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