
人口減少対策の一環として、移住に関するイベントが都市圏で活発に開かれており、大阪でも田舎暮らしに関する相談会やセミナーが毎週のように開かれている。こうした移住に対する関心の高まりを背景に、7月19日には、ふるさと回帰支援センター・大阪主催の、「おいでや!! いなか暮らし移住フェア2025」が、OMMビル(大阪市中央区)で開かれた。「西日本最大級の移住イベント」と銘打たれた会場には2287人が来場。その盛り上がりを紹介する。
人口減少に地方の危機感
過疎化、少子化、後継者問題などに悩む市町村にとって、人口増対策は大きな課題となっており、近年は「限界集落」や「消滅可能性自治体」について、深刻な問題として語られる機会も増えている。
そうした中、地方の社会課題を解決し、活性化させていく、地方創生事業が国策として強化されており、都市圏で公益団体や自治体が開催している移住関連イベントも、国の施策に沿ったものとして注目されている。
「移住希望地1位」の群馬県
10回目となる今回の「移住フェア」には、北海道から沖縄まで200を超す自治体や移住関連団体が出展した。多くの来場者が会場を行き交う中、「ぐんまちゃん」のキャラクターとともに、笑顔で群馬県の魅力をアピールしていたのは、群馬県移住促進係の羽田楓さん。
ふるさと回帰支援センターが2月に公表した「2024年移住希望地ランキング」で1位になったこともあり、熱心に移住施策や恵まれた居住環境などを説明。
「東京都心への通勤が可能なアクセスのよさ(約1時間)、子育て支援の充実、住宅費など物価の安さなど、住みやすさが評価されたのでは」と目を輝かせていた。
群馬県の人気が高まっていることを裏付けるように、人口変動で昨年(10月1日時点の調査)は転入者が転出者を5768人上回る「社会増」を記録した。

「遠州の小京都」をアピール
静岡県では、えんじ色の法被姿ではつらつと接客していた森町のスタッフが目に留まった。お茶やメロンなど、特産物が多いことで知られ、近年は風情豊かな街並みや由緒ある神社仏閣が多くあることから、「遠州の小京都」として人気が高まっている。
観光などで、森町を訪れたことがある交流人口を、いかに移住・定住へとつなげていくか。森町では定住促進課が中心となって、移住施策を構築。「森っ子出産祝い金」「住もうよ森町新婚さん応援金」などの支援策を実施している。
同課の課長補佐、榊原希美さんは「日本の原風景と言えるような自然環境に恵まれ、小京都の街並みも移住者に好評です。地域の祭りが頻繁にあり、移住者と地域住民の一体感を図る役割を果たしています」とアピールしていた。
進む復興のまちづくり
東日本大震災と原発事故後、県外への転出者が相次いだ福島県は、県のほか、富岡町、楢葉町、石川町、大熊町移住定住支援センターの計5団体が出展。
近年は手厚い移住支援策や子育て・教育環境の整備もあって、県全体で転入者が増え続けており、24年(令和6年)の移住者数(定住者のほか二地域居住者も含む)は、過去最多の3799人を記録した。
会場で富岡町のPRに努めていた、とみおかプラス事務局長の香中峰秋さんは「復興のまちづくりが進む中、一緒に汗を流したいと、移住する人が多い。町の活性化や雇用創出に貢献したい、と起業する人もいる。移住者と古くから町に住んでいる人たちとの交流も自然な形で進んでおり、地域コミュニティーの面でも心配ない」と話す。
個別の移住体験プログラム
北海道・弟子屈(てしかが)町のブースでは、setten理事、小島萌さんが町の魅力熱心にアピール。「阿寒摩周国立公園が町の面積の半数以上を占め、酪農も盛ん。観光と農業の町で、移住者の受け入れにも熱心です。弟子屈町の移住に関心がある人に焦点を当てた、個別の『オーダーメード型移住体験プログラム』を作成しており、現在、プログラムの参加者を募集中です」
〝正直に掲載〟が好評の冊子
雑誌社が公表する、移住先人気ランキングで毎年のように上位にランクされる、大分県の豊後(ぶんご)高田市では、定住促進係の加口昌平さんと末宗奈津子さんが、漫画風に仕上げた冊子『豊後高田あるある!』で、「ボンネットバスが無料で乗れる」といった同市の特色を紹介。長所だけでなく、短所と思われるところもユニークな表現で掲載しており、「正直な県民性がうかがわれる」と好評だ。
このほかの出展自治体からも、ふるさと愛を感じる熱い思いが聞かれた。「移住フェア」に対する感想もあり、「全国規模の移住イベントは、多くの情報に触れることができ、新たな発見もある。他県の担当者と情報交換ができ、刺激になる」といった、主催者に対する感謝の声も。その一方で、「企画内容がマンネリにならないようにしてもらいたい」といった注文もあったが、期待を込めた発言で、会場全体としては満足感がうかがわれた。
「東京一極集中の人口を地方へ」
そうした中、冷静に移住施策の問題点を指摘する担当者もいた。「各ブースごとの市町村が移住者の奪い合いをしている感じがした。イベントを通じて各自治体が競い合って移住施策に反映していくことは、プラス面ではあるが、東京一極集中を解消するためには、地方全体の人口が増えるような視点必要。各自治体が、お互いの地域の魅力を認め合い、移住希望者の相談内容に応じて、北海道の自治体が九州の自治体を紹介する、といったケースがあってもよいのでは…」
数多く聞かれた「ふるさと自慢」の一方で、一握りの意見ではあるが、「自治体間の競争より、協力・連帯へ」といった提言を、どう移住イベントに反映していくか。東京一極集中から〝地方の時代〟を実現していくためにも、移住イベントで実績を積み重ね、地方創生の一翼を担う、同センターの社会的役割は大きい。(猪口隆)