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今回の規約変更でこれまで「遅滞なく」だった契約の申し込み期限が、テレビを設置した月の翌々月の末日までと改正。割増金はこの期限を過ぎた場合に請求でき、不正な手段で受信料の支払いを免れたケースも対象となる。新たな制度は2022年施行の改正放送法などに基づき定められた。一方でNHK受信料を支払うことに73・4%の人が「納得していない」と回答。公共放送機関としての「独立性、公正性」を考えても国民感情は厳しく、すんなりと受け入れられそうにない状況だ。
約7割が「スクランブル放送にするべき」
逆進性の強い徴収制度
NHKは1月10日、2023年度の予算と事業計画を発表。収入は前年度に比べ、6・5%(450億円)減の6440億円で、支出は2・5%(170億円)減の6720億円。10月からの受信料約1割値下げなどに伴い、収支は280億円のマイナスとなり、2年ぶりの赤字となるが、財政安定のための繰越金で〝穴埋め〟する。ただ、国民の受信料制度への批判は高く、受信契約者の減少が続いている。
ファイナンシャルメディア「アトムくん編集部」(運営・プラスワン)が延べ1000人から回答を得たNHK受信料に関するアンケート調査では、「支払うことに納得していますか」の質問に73・4%の人が「納得していない」と回答。受信料を支払っている人に限定しても、「納得していない」人が64・3%と半数以上の上った(インターネットユーザーを対象に22年9月14日~同月28日実施)
NHKの運営費用は、受信料で賄われているが、単身世帯で受信料を払っている男性(73)は「受信料はテレビを持っている人が払っているが、貧しい人でもテレビを10台持っている金持ちでも同額。これは極めて逆進性(所得の少ない人ほど負担が多く、所得の多い人ほど負担が少ない)の強い制度。国民年金とわずかな蓄えしかないので支払うのはしんどい」と話している。
9割超が「受信料は高い」
同調査によると、「受信料を払っている」と回答した人の割合は70・3%で、NHKの調査結果でも、受信料を支払っている世帯は総世帯数の73%であることから、ほぼ同じ結果となった。
この調査はNHKが値下げを発表(22年10月11日)する前に調査しているので、その点を考慮に入れる必要はあるが、それでも約9割(90・3%)の人が「受信料が高い」と答えた。
受信契約、6割以上「違憲」
最高裁は17年12月の判決で放送法第64条1項『協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない』について、合憲と判断している。ただ、この判決は国民感情とは大きな乖(かい)離がみられた。
受信契約について68・5%の人が「違憲」と回答。受信料を支払っている人に限定しても「違憲」と答 えた人が62・2%に上った。
また、「NHKはスクランブル放送(専用の受信機を持った人・放送料を支払っている人しか、放送が受信できない方法)にするべきだと思いますか」と聞いたところ、69・2%の人が「するべき」と答えた。
最後に、「NHK受信料を支払うことに納得していますか」と聞いたところ、73・4%の人が「納得していない」と回答。これを受信料を支払っている人だけでみても、「納得していない」人が64・3%と半数以上を占めた。
NHKはスクランブルの導入については以下の見解を公表している。
「スクランブルをかけ、受信料を支払わない方に放送番組を視聴できないようにするという方法は一見合理的に見えますが、NHKが担っている役割と矛盾するため、公共放送としては問題があると考えます。
また、スクランブルを導入した場合、どうしても『よく見られる』番組に偏り、内容が画一化していく懸念があり、結果として、視聴者にとって、番組視聴の選択肢が狭まって、放送法がうたう『健全な民主主義の発達』の上でも問題があると考えます」
英BBC、受信料徴収終了へ
英政府は公共放送BBCの受信料制度などを含む放送に関する白書を公表し、「BBCの一律徴収制度が27年にも終了する可能性がある」と公表している。
「近年のインターネット動画配信サービスの普及により、BBCなどの視聴者が減少し、不公平感が高まっている」ことなどが主な理由という。
確かにNHKの「公共性・独立性」の確保は欠かせないが、残念ながら国民感情としては今のままで〝よし〟としていない状況だ。
BBCが一律徴収を廃止して別の制度に移行すれば、同じ公共放送であるNHKの受信料を巡る議論にも確実に影響を与えることになりそうだ。