教育

「寝屋川ショック」の背景にあるもの 定員割れが問いかける〝志望校選び〟の現在地

 昨年度の高校入試を振り返ると、少子化の進行、私立高校の授業料無償化、不登校生の増加など、制度の変化や社会的背景を受けて、公立高校の約半数が定員割れとなったことは、本紙3月29日号でも報じた通りだ。なかでも読者の関心が高かったのは、大学合格実績と伝統を誇る進学校・大阪府立寝屋川高校で定員割れが起きた、いわゆる「寝屋川ショック」ではないだろうか。今回はその背景を探るべく、守口市・門真市・寝屋川市で45年にわたり地域の子どもたちの学力保障に尽力してきた「つかさ塾」塾長・石田雅司さんに話を聞いた。

「寝屋川ショック」の背景にあるもの 定員割れが問いかける〝志望校選び〟の現在地

 令和7年度入試で、寝屋川高校がまさかの定員割れに至った。大学進学実績も高く、地域の進学校としての地位を築いてきた同校の〝定員割れ〟は、受験関係者に大きな衝撃を与えた。

 大阪府の公立高校入試では、国語・数学・英語の三教科について、A(基礎)・B(標準)・C(発展)の三段階から問題の難易度を選べる制度があり、各校が教科ごとに採用問題を設定する。文理学科設置のトップ10校などは基本的に3教科ともC問題を採用しているが、寝屋川高校は2018年度に数学をB問題に、20年度には国語と英語もB問題に変更。ところが、24年度入試では国語と数学を再びC問題に戻し、英語のみB問題を維持した。こうした動きについて、石田塾長は「寝屋川高校は、志願者の学力や傾向を見極めながら、柔軟に出題レベルを調整してきた」と分析。そのうえで、今回の定員割れについては次のように語る。

 「この地域でC問題を採用している四條畷高校は、24年度の倍率1・19倍から25年度は1・44倍まで上昇しました。一方で、寝屋川高校に続く人気校である牧野高校などはB問題を採用しています。例年なら寝屋川高校を受験していた層が、授業料無償化による経済的な余裕もあってチャレンジで四條畷高校を、あるいは3教科ともB問題の牧野高校を選んだ。その結果、数学、国語がC問題、英語はB問題で対応しにくい寝屋川高校が敬遠された構図が見えてきます。さらに、24年度に定員を40名増やしたことも定員割れの一因でしょう」

 加えて、私立高校の授業料無償化に対する〝誤 解〟も、受験行動に影響を与えているという。「進路懇談をしていても、『私立はすべて無償』と思っている保護者が非常に多い。実際に全額無償になるのは特待生に限られており、入学金や施設費、標準服費、修学旅行費などを含めると3年間で100~120万円は必要になります。府立高校なら約30万円程度なので、費用感のギャップがある。私立専願が増える一方で、家計への圧迫や、合格後の空白期間に学習意欲が落ちる生徒も出てきている。人口減少に伴う公立高校の再編は必要だと思いますが、私たちも正しい情報を保護者に伝えていかなければならない」と、石田塾長は危機感をにじませた。