姫路から世界へ 創業136年「まねき食品の〝BENTO〟」新たな挑戦

姫路市民のソウルフード 

 「まねき食品」は創業1888(明治21)年、姫路に根付いて136年を迎える老舗食品会社だ。時代と共にニーズは変わる中、これほど地元で親しまれ、世紀を超えて続いてきたのには理由がある。2025年の大阪・関西万博には、未来型のレストランを出店する。「日本独自の文化である〝BENTO〟の魅力を世界へ発信することが使命」と話すのは、2019年に6代目社長に就任した竹田典高さんだ。

6代目まねき食品社長 竹田典高さん

 JR姫路駅を降り立つと、ホームにはだしの香りが漂ってくる。姫路市民は、この香りを嗅ぐと「姫路に帰ってきたなぁ~」と心がほっとするという。1949(昭和24)年から駅のホームで多くの人をとりこにしてきた姫路名物「えきそば」のだしの香りだ。姫路市民なら誰もが胃袋を満たされた記憶のあるこの味。中華麺に和風だしを組み合わせた一見ミスマッチの商品だが、今では姫路のソウルフードと呼ばれるほどの認知度を誇っている。その「えきそば」を提供しているのがまねき食品だ。

姫路のソウルフード「えきそば」

 「当時の電車は、車窓を眺められるようにいすが外を向いていて、車内にえきそばを持ちこむことができたんですよ。食べ終わった丼鉢は床に置いておくと国鉄(現在のJR)の車掌が回収してくれたんです」と竹田社長は話す。

昭和30年代「えきそば」の様子

 同社は136年もの間、市民の心と舌を満たしてきた。「先代が頑張ってきてくれたおかげです。地域社会と深いきずなで結ばれ、共に歩んでくることができました。伝統を守りながらも新しい挑戦を続けてきた。安住することなく柔軟に変化してきたからでしょう。支えて下さった人への感謝の思いを原点に、常にチャレンジしていく事をモットーに、これからも時代のニーズに応じた商品開発にも力を入れていきます」と竹田社長は熱く語る。

 そんなまねき食品は、崎陽軒のシウマイ弁当とのコラボにも挑戦し、1年半にわたり試作を繰り返し完成。関西のだしを融合させた関西シウマイ弁当を作り上げ、行列のできる人気商品となっている。

崎陽軒とのコラボ商品

お弁当のドライブスルー?

 コロナ禍で飲食店が苦境に立たされた時期、同社は逆境を乗り越えるために、ユニークな取り組みを始めた。ドライブスルーだ。外出自粛やソーシャルディスタンスの必要性が高まる中、住民に安全に食事を提供するためのアイデアだった。この取り組みは単なるビジネスの延命策でなく、地域社会への貢献ときずなを深めた。実施直後から同社には、たくさんの〝ありがとう〟の声が届く「やってよかった! と思えた瞬間だった」と振り返る。この取り組みは住民に勇気と感動を与え、同社の温かさと誠実さを象徴するものとなった。

行列を生んだドライブスルーの様子

日本の弁当文化を世界へ

 同社は1889(明治22)年に日本初の〝幕の内駅弁〟を提供したことで知られている。芝居鑑賞の際、幕と幕の間(休憩時間)に食べることから〝幕の内弁当〟と呼ばれるようになった。

 日本の弁当は文化であり芸術品。異なる味付けの料理が混ざらないよう、盛り方にこだわり、視覚でも楽しませるエッセンスがプラスされている。花見や祭りなどの文化的習慣のかたわらにはいつも弁当が存在し、人々の記憶に残っていく。主菜・副菜などを一つの箱にきれいに詰める文化も日本ならではだ。食べる人への配慮を怠らない、おもてなしの心が息づいている。

 そんな日本が誇る弁当を「BENTO」として同社は世界に発信し海外では、タイのバンコク高島屋にも出店。日本の食文化を「BENTO」を通じて世界に広めている。

大阪・関西万博では、究極の「えきそば」?!を提供

 いよいよ、2025年に迫った大阪・関西万博。同社も関西の企業として、万博にかける想いは人一倍強い。

 「我々のような中小企業が万博に挑戦することで、日本をもっと元気にしたい。未来の子どもたちに、夢を抱いてもらえるような面白い社会、誇れる日本にしていきたい」と熱く語る竹田社長。

 万博会場では未来型のレストランを出店し、「BENTO」と究極の「えきそば」を提供する予定。食だけでなく、視覚でも楽しめる工夫を盛り込み、日本文化の素晴らしさを映像でも楽しませる計画だ。「あまり詳しくは話せませんが、めちゃくちゃ楽しみにしてもらえたら…」と笑顔を見せる竹田社長。

味覚と感性を満たす「まねき食品」のブースイメージ

 また、「『まねき食品を選んで良かった』とお客さまに思ってもらうことはもちろん、ここで働く従業員にも『まねき食品で働けて良かった』と思えるような環境を整えている」と話す。

 幸せを招く「まねき食品」は、人々の記憶に残る食と感動を〝BENTO〟に詰めて未来へと紡いでいく。

まねき食品の社員たち