コミュニケーションライター/黄本恵子
あらゆる人間関係の中で私たちが最も重要視しなければいけないのは、やはり一緒に暮らす家族との関係性です。ここの関係性がうまくいっていれば、学校生活や仕事で大変なことやストレスがあっても、回復しやすく、乗り越える気力を持つことができます。
家族など身近な存在に対していつも不満が多く、争いが絶えない人たちは、次のような感覚で相手に接していることがとても多いです。
・「相手は私の思う通りに動いてくれて当然だ」
・「相手は私の気持ちを分かってくれて当然だ」
これを『一体感』と言います。相手と自分の間の境界線がとても曖昧な状態です。
一体感が強い人は、相手が自分の思う通りに動いてくれなかったり、自分の気持ちを察してくれないと、激しい怒りを抱きます。
そして、きつい言葉で非難したり、不機嫌な態度を取ります。そうすることで相手を自分の思う通りにコントロールしようとするのです。
一方、身近な存在との関係性が良好で、長続きする人たちは、次のような感覚で相手と接しています。
・「相手と自分は、違う人格や考え方を持つ、別の人間だ」
・「相手は、自分と異なる意見や感覚を持っていて当然だ」
これを『離別感』と言います。相手と自分の間に境界線がきっちりある状態です。
離別感を持っていると、相手が自分と異なる感覚や意見を持っていても、自分の思う通りに動いてくれなくても、強い不快感や嫌悪感を抱くことなく、受け入れることができます。
コミュニケーションの際は「どうすれば自分の気持ちが伝わりやすいだろうか?」を考え、工夫しようとします。
『一体感』は、元々は『母子一体感』と言って、赤ちゃんや幼い子どもが母親に対して抱く『健全な甘え、健な依存』です。
赤ちゃんや幼い子どもは、母親など保護者にお世話をしてもらわないと生きていけないし自分の身を守れないので、一体感を持つのは当然です。
一体感は『幼い子どもが持つ感覚』、離別感は『大人が持つ感覚』と言っていいでしょう。
一緒に暮らす家族などは、心理的距離も近い分、一体感を抱きやすくなって当然と言えます。
ですが、一体感を強く持って接していると、そのうち相手も自分も疲弊してきます。たとえ家族であっても、同じ感覚や考えを持つというのは難しいですし、100%理解し合えることはないのです。
「自分はちょっと一体感が強いかな…」という方は、これから離別感を持つよう意識してみましょう。
日常で相手がしてくれていることや存在を当たり前と思わず、「ありがとう」という言葉を伝えるようにしてみてください。
相手の話をよく聞き、自分とは違う考えや感覚を持っていても否定せず、「そういう考え方もあるんだね」と受け入れる姿勢を持つことも大切です。
『感謝の言葉』と『話を聞くこと』。この2つのコミュニケーションで、周囲の人たちとの関係性は、きっと今より心地良いものに変化していくでしょう。
黄本恵子(きもと けいこ)
大阪市出身。1980年生まれ。関西大学社会学部卒業。心理学について学びを深め、人間関係に悩む人々のカウンセリング業務に従事。その経験を活かし、家族間や男女間のコミュニケーションについての記事を大手WEBマガジンにて執筆。ビジネス書の編集・執筆協力にも多数携わる。米国NLP協会認定 NLPマスタープラクティショナー。
〈メディア出演〉ニュース番組『新・情報7daysニュースキャスター』に出演。「高齢者の親に免許返納を促す伝え方」についての記事が反響を呼び、取材を受ける。朝の情報番組『ビビット』に出演。「2歳児ができること」について紹介した記事が取り上げられる。