時代の底辺を生きる男たちを描いて定評のあるかなた狼監督(52)がコロナ禍真っ最中の2021年6月に大阪で撮影を行った映画「ありがとうモンスター」の一般上映が始まり、大阪・ミナミのなんばパークス・シネマではダブル主演の「吉本新喜劇」名脇役・佐藤太一郎(46)と大衆演劇「都若丸劇団」座長・都若丸(43)らが舞台挨拶した。同館での上映は14日まで。
清掃会社で働くジョニー(都)は同僚虫太郎(佐藤)を誘い、大衆演劇の劇団に飛び込むがヘマばかり。映画の悪役ジョーカーに刺激された2人は「モンスターになるぞ」と髪を刈り、歌舞伎並みのメークを施し、酔っ払って暴れ回るが…との展開。
主演の佐藤は役作りのために17㌔減量し48㌔になり、トレードマークの目玉がますます強調されギラギラしたやせ型に。逆に若丸はロケ弁当を食べ続け10㌔増量体形を維持、佐藤と対象の妙をスクリーンで披露。
佐藤は「2人とも普段は舞台中心の活動なので観客の反応を見聞きして演技に取り入れるクセが付いている。しかし映画は監督のOKが出るまで何度でも演じ直し、完成すれば今度は変えられない。本番以外はずっとマスク生活だったし」と振り返り。若丸は「映画は〝どのカメラが、どれぐらいの遠近感で撮っているのか?〟がすぐ分からない。役柄と実際の自分とは正反対の性格なので、撮影中はずっと気持ちを役柄に寄せていました」と懐かしそう。
かなた監督は「東京五輪直後の時期に大阪で撮影したが、ほぼ場面通りに順撮りし、コロナが多い時期の撮影中に感染者を出さないよう気を使った。俳優部は撮り終わったら終わりですが、我々はそこから孤独な編集作業。ようやく一般劇場上映にこぎ着け感無量。物語は虫太郎が魂の置き場を探す内容ですが、撮影当時に比べ世界では戦争が次々始まり、日本では地震災害が起きた。改めて映画を見られる平和のありがたさを感じる」と話した。
(畑山博史)