テレビ東京の番組「家、ついて行ってイイですか?」で2020年に「いつクビになるか分からない」という意味で〝崖っぷちの演歌歌手〟と紹介されたことがある秋山涼子が、歌手デビュー35周年の記念曲として「春待つ女」を出した。交通費節約で自身のPRと写真を大書したマイカー涼子号を運転して全国どこへでも登場。このほど関西を訪れ、ノリのいい浪速のファンに元気をもらっている。
所属レコード会社も現在のテイチクで4社目、その間目立ったヒット曲は1作もない。それでも35年間現役を続けているのだから「どこが崖っぷちやねん!?」と口の悪い大阪でのキャンペーンで冷やかされることもしばしば。浪速商法では「このままでは潰れます。買うて下さい」という看板を出すお店が本当にあって、その店がつぶれず何十年も商売を続けてきた故の軽口だ。
秋山が長続きする秘訣は実家が3代続いた江戸っ子で、現在も江戸川区に家族で住むから生活費の心配がないこと。さらに歌手にとって新しい楽曲を提供してもらえないと歌いたくても歌えなくなるが、彼女は自分で作曲できるので手間いらずなのだ。
「今回も円香乃先生に2曲の詞を書いて頂き、私がスマホを使って作曲して譜面に。それを伊戸のりお先生が手直しして編曲して下さいました。伊戸先生は私のスマホでの作曲法が無料アプリだったので驚かれ、とっても高い作曲ソフトをプレゼントして下さいました。機能が多すぎてまだ使いこなせていません」とケロリ。
ここ数曲、北海道にこだわった曲が続き、今回の「春待つ女」も北の居酒屋の女将が主人公。カップリングの「恋の屋形船」は故郷・東京の川が随所に登場する。
「西日本はご縁が薄いですよね?」と聞くと、「飛んでもない、大阪をはじめ関西の演歌ファンは掛け声や拍手が温かくて大好き。いつも背中を押されます」と手応えを感じている。
今回のCDにはなぜか3曲目としてテイチク移籍第1弾「酒場恋」(12年)のカップリング曲だった「愛終列車」を新たに収録。「だってこれまで1350円だったCDが秋に1500円に値上がりしたんです。聞いて下さるお客さまに150円分、お得感を持って頂きたくて」と説明。こうしたきめ細やかな気配りも生き残りには欠かせないポイントのようだ。
(畑山博史)