なにわ食のラブストーリー 「熊の鳥焼」食通もうなる、薪で炙った〝鳥焼〟

囲炉裏を囲み仲間と楽しめる「熊の鳥焼コース」
囲炉裏を囲み仲間と楽しめる「熊の鳥焼コース」

 「たかが焼き鳥」と言われた時代に驚くなかれ、入会金30万円の会員制の店を「天六」に開き、会員数は1万人超。予約が半年以上も取れない人気店にした男がいる。20歳の若さで独立したものの、4年ほどで閉店するという辛酸をなめた46歳の熊脇稔康社長。その後、〝修業〟によって鳥を知り尽くし、2014年に開業した。

鳥を知り尽くした熊脇稔康社長
鳥を知り尽くした熊脇稔康社長

 今では「キタ新地」や「祇園」などに焼き鳥店を展開し、10月には「会員制ではない」誰でも気軽に行ける店「熊の鳥焼」1号店を梅田の堂山町にオープン。もちろん素材や焼きの技術は「そのまま」で食通にもうれしい限りだ。

 「鶏は種類や季節によって柔らかさ、歯ごたえ、旨味、あっさり、しっとり、コリコリなどとさまざまな特徴がある。部位を使い分け、特徴を最大限に活かして提供する」とこだわり、〝妥協のない〟店を目指している。人気は「もも」「まるはつ」「ひねぼんじり」で、口の中に旨味(うまみ)がじわっと広がると、思わず「うまい」と声が出てしまう。

 「焼き方」にもこだわっている。懐かしい囲炉裏(いろり)には(まき)と炭。火力のメインは薪だけに煙がモクモクなんてこともあるが、それも山深い里での食事をイメージすれば、(おもむ)きも一層だろう。おすすめは名物の「薪(あぶ)り」や「天草大王の薪タタキ」などに〆の「挽肉(ひきにく)めし」がつく「熊の鳥焼コース」(5500円)。

 窓や装飾は一切なく、人間ひとりが通り抜けられるだけの小さな入り口と、表札を少し大きくした店名プレートだけを掲げた店。まさに〝秘密クラブ〟かも、といった風情。〝特別なカレ、カノジョ〟と…。

【メモ】熊の鳥焼/tel.06(6131)1786/大阪市北区堂山町16熊のマネージメント」(熊脇稔康社長)

「やきとり」と「鳥焼き」

 2007年に「やきとリンピック」と銘打った祭典が開かれている。全国から著名な名物店が一堂に集まった。鶏肉だけでなく、牛や豚肉が主の店も多かった。「焼き鳥」は使う材料が地域によって異なるのだ。一般的に臓物などを「串焼きにしたもの」すべてが「焼き鳥」と呼ばれているため、全国組織などでは「やきとり」と平仮名を総称としている。
 「焼き鳥」は〝串打ち〟されたものというイメージが強い。同じく鶏肉を焼いて食べるのだが、焼き肉のように焼いて食べるスタイルを「鳥焼」と区別化している。各地の山間部などでは、こちらの方が普通である。店も各地にあって、牛肉で名高い松阪市では、味噌ダレで食べる鳥焼がソウルフードとして知られた存在となっている。