Spyce Media LLC 代表 岡野 健将
8月24日から福島第一原発の処理水の海洋放出が始まり、中国などから非難の声が上がっています。一部の人たちは「海外の声を真摯(しんし)に受け止めて海洋放水を中止すべき」と声高に叫んでいますが、飛んだお門違いです。
放射能汚染水は、濃度を基準値以下に薄めて海に放出すること自体は国際的に認められている行為なのです。このため、世界で原発を運用する国は多かれ少なかれ、放射能汚染水を海洋放出しています。日本の海産物を全面的に輸入禁止にした中国だってやっています。日常的な活動の一つに過ぎないので目立たないだけです。
今回、海洋放出された処理水は、ALPSという放射性物質を除去する設備を通って放射性濃度が規制の基準値の40分の1未満まで薄まった処理水で、汚染レベルは国だけでなく、IAEAの原子力安全基準以下になっています。実際に海に放出される段階では科学的見地から考えても汚染レベルでは全く問題ない程度になっているのです。
何年か前に福島第一原発を訪れた際、無数にある処理水の貯蔵タンクの間を歩きながら現場の担当者から説明を受けましたが、その段階で早晩タンクを置く土地が無くなる事は分っていたし、処理水の濃度は安全レベルに達しており海洋放出以外に処理する方法はないと言われていました。
IAEAの検査も受けており、海洋放出する事にお墨付きも得て、満を持しての事なので、今後も引き続きモニタリングは必要ですが、安全性において心配する事はないのです。
福島県はあの原発事故以来、人のいなくなってしまった土地を活用して原子力の研究開発施設や放射能の除去など最新テクノロジーの実験設備が複数建設され、その中では世界最先端の研究が行われています。不幸なことにこの地域は放射能で汚染されてしまいましたが、そこは世界で唯一の本格的な実験場として新たな役割を得て再利用されています。生真面目な日本人の性格や、高い技術力、研究に打ち込む学者や研究者などの人材、いろいろな要素が絡み合って世界をリードする研究が福島県で進められているのです。
地元の工業高校や県内の大学の理系学部に通う学生たちは、自分の故郷を復活させ、安全で安心に暮らせる街を取り戻すために、原子力の分野に進路を選んだと熱く語っていました。このように日本の原子力技術や関連テクノロジーは世界最高峰で、日本にしかないものをいくつも持ち合わせています。
外圧に負けて海洋放出による風評被害が出ないよう、私たち一人一人も何が正しい情報なのかをしっかり理解して、できる事から協力していきましょう。