安倍晋三元首相銃撃事件から1年 「孤独」に手を差し伸べる世の中に

安倍元首相が殺害された銃撃事件から1年となり、事件現場には、多くの人が献花に訪れた
安倍元首相が殺害された銃撃事件から1年となり、事件現場には、多くの人が献花に訪れた

 安倍晋三元首相銃撃事件は発生から1年がたった。現場の近鉄大和西大寺駅前は献花し、合掌する人の姿が尽きない。

 「ローンオフェンダー」の言葉がある。和訳すると、単独の攻撃者。自爆テロ、ローンウルフ(一匹おおかみ)に通じる。今年4月に岸田文雄首相が狙われたことで、メディアで頻繁に使われるようになった。新旧首相襲撃事件の共通点がローンオフェンダーなのだ。

 「ローンオフェンダーとなる前に、孤独に悩む若者がいれば、手を差し伸べ、交流の場をつくる必要がある」。こう語ったのは元警視庁の石丸徳幸さん(57)だ。自民党幹事長に就いた2003年当時の安倍氏を担当したSP(警護官)である。社会のありようをこう続けた。

 「孤独な若者を含め相談できずにいる人、引きこもっている人、心に傷を持つ人に対し、地域のコミュニティーを通して寄り添い、支え合う。孤独、孤立を防ぐ取り組みは欠かせない」

 昨年7月8日、本紙記者たちは一報を受け、近鉄大和西大寺駅へ。現場検証が進む中、目撃者の声を拾った。取り押さえられた瞬間の犯人を見た67歳主婦の証言は印象深い。犯人の表情は「真顔」だった。

 「孤独」に手を差し伸べる世の中の実現を―。そう願わずにはいられない。