天空の舞台で出会う静かな革新 「鮨 ラビス」が描く〝美食の真髄〟

フォーシーズンズホテル大阪

 今年8月に開業2周年を迎えるフォーシーズンズホテル大阪の最上階、地上約175㍍に位置する「鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ」が、国内外の美食家から注目を集めている。
 パリ、モナコに続く世界3店舗目として誕生した同店は、フランス料理界を代表する巨匠ヤニック・アレノ氏と、日本の鮨職人の技が交差するガストロノミーの舞台だ。3月、桜のつぼみが膨らむ季節にアレノ氏が来館した。フランス国内で二つの三つ星レストランを率いる同氏は、現代フランス料理を牽引する存在。大阪では安田至料理長とともに、単なる「和と洋の融合」を超えた、二つの文化が互いを高め合う新たな表現を提示する。

鮨は一貫一貫、にぎりたてを提供

「エモーション」から始まる、魔法のソースと伝統の技

エモーションの一品である「赤いアンディーブのサラダ」は〝ほどく〟ように食す

 コースは、アレノ氏の代名詞である「ソース」の技法を生かした前菜「エモーション」から始まる。赤酢やポン酢といった和の酸味にフレンチのエッセンスを重ね、食材に新たな息吹を与える一皿だ。
 続くにぎりを担うのは、名門「八芳園」や海外でヘッドシェフを歴任した安田至氏だ。アレノ氏がその卓越した技術に全幅の信頼を寄せる安田氏は、檜のカウンターで一貫ごとに仕上げるスタイルを貫く。江戸前鮨の真髄である〝一手間〟かけた一貫が丁寧ににぎられる。提供直前に柑橘を搾る、削りたての鰹節を添えるなど、細やかな工夫を重ねる。備長炭で炙る際の香りや音も、五感を刺激する演出として印象的だ。圧巻は、取り出された見事なマグロの柵に目の前で包丁が入れられる瞬間だ。断面は、霜降り肉のように鮮やかでゲストを魅了する。
 フランス料理的な発想を取り入れた一貫もある。大トロに揚げたエシャロットを添え、脂の甘みに香ばしさと食感を加えることで、素材の魅力を一層引き立てる。

一貫一貫にぎりたてを目の前に。添えられているガリは安田料理長のオリジナル。リンゴの角切りが入っている

既成概念を打ち破る「自由な発想」との出会い

ヤニック・アレノ氏(左)と安田至料理長。二人の巨匠が互いの世界を敬い、高め合うことで生まれる料理は、伝統を守りながらも常に最高を目指している

 安田氏は、アレノ氏の「固定概念に縛られない発想」に刺激を受けてきたと語る。青のりをデザートに使う提案や、イチゴに火を入れる発想など、既成概念を超えるアイデアに驚かされる場面も多い。「自由に、楽しく、美味しく」が信条だと締めくくった。
 安田氏が語る江戸前鮨の本質は「引き算」の美学だ。塩をして寝かせ、水分を抜き、素材の純度を高める。シャリはササニシキにコシヒカリを数割ブレンドし、口の中でほどける心地よさを追求する。
 対照的に、フレンチはソースを重ねて味を構築する「足し算」の料理。アレノ氏の独創性と、安田氏の丁寧な一手間が響き合うことで、伝統を尊重しながらも常に新しい表現を目指す料理が生まれている。

にぎる前の大トロと揚げたエシャロット

おまかせエモーション(ショートランチコース)9,000円/にぎりおまかせ(ランチコース)20,000円
おまかせ(ディナーコース)38,000円
■フォーシーズンズホテル大阪 37階 「鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ」
大阪市北区堂島2-4-32/☎︎06(6676)8591(代表) 木~火曜営業

マグロの柵に包丁を入れる安田料理長
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