大阪・関西万博のチェコパビリオンで9月25日、エネルギーに関するセミナーが開かれ、同国からエネルギー関連企業のトップらが来日した。
ペテル・ファイモンさんは同国最大の地域熱供給のパイプラインを運営するテプラーレニ・ブルノ社でゼネラルマネージャー(GM)を務めている。同社は原子力発電所で生じた熱で水を120度に温め、パイプラインで都市部に移送。各家庭の温水暖房として供給している。
原発から42㌔離れた同国第2の都市ブルノ(人口約40万人)までの地下2㍍にパイプラインを敷設。温水が通過する直径70㌢のパイプには、厚さ50㌢のインシュレーター(断熱材)を巻き、移送中の温度低下を防いでいる。各家庭で暖房に使われた温度の下がった水は、再びパイプラインを通って原発に移送して温められる仕組み。特許や最新技術は必要なく、新しい発想から誕生したシステムだ。
最初のパイプラインは2年前に完成。続いて来年から2つ目の施設に着工し、2031年にはサービスを開始する予定という。
現在は天然ガスを燃やして作った温水を各家庭に供給する施設があるが、31年には原発からの温水に切り替えてすべてを閉鎖する予定だ。これにより「年間13万5000㌧の二酸化炭素(CO2)を削減できる」とファイモンさんは説明する。
加えて、CO2削減で毎年約1000万ユーロの炭素税の負担金もなくなるため、「他の節約分と合わせ、現在より暖房料金を約10%下げられる」という。原発の熱利用なら燃料費の変動がなくなり、暖房料金も安定する。
使用する温水は原発の冷却水などではなく、原発全体で使う安全が確認されたほんの一部の水で、放射能汚染の心配もない。
同社の次世代エネルギーシステムの紹介が目的で来日したファイモンさん。「EU圏内ではフランスやフィンランドからの視察要請がある。日本からも問い合わせがあれば対応したい」と話していた。
