関西圏でも少子化により小学校の児童数が減少しているが、2024年度の関西圏中学入試は、受験率は微増傾向となった。コロナ禍の「安全志向」から抜け出し、難関校に出願する〝強気の受験〟状況に戻ったと言えそうだ。なかでも大阪は高校授業料無償化制度を追い風に「中学から私学進学」を考える家庭が増えた。
関西圏でも少子化進む
文部科学省の23年度「学校基本調査」によると、関西2府4県(滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県)の小6児童数は17万285人。前年度と比べて2359人、1・4%の減少となり、関西圏でも確実に少子化が進んでいる。一方で24年度の関西圏の中学入試では、統一入試解禁日午前の応募者数は1万7975人で、昨年度の1万7999人とほぼ同じ。
その結果、関西圏の小6児童数全体に対する初日午前の応募者数の割合は昨年度の10・4%よりもわずかに上がり、10・6%となった。全日程の総応募者数は6万4063人で、昨年度の6万3498人と比べて0・9%の微増。中学受験に詳しい塾の進学指導担当者は「少子化は進んでいるが、中学受験をする人数はほぼ変わっていない。難度が緩和することはしばらくないと思う」と分析する。
大阪、「中学から私学進学」へ 履正社・追手門学院・清風南海が大幅増
昨年に続き、大幅に受験生が増えた大阪は、「特色ある教育」や「整備された教育環境」など私学らしさを売りに近畿圏で最も中学受験熱が高まっている地域だ。
そのなかでも目を引くのが全日程の総志願者数392人で前年比131・1%となった履正社、同458人で前年比129・4%となった追手門学院大手前の2校。また、難関校のひとつ清風南海は、近年減少傾向にあったが、23年度(1435人)から24年度(1912人)は477人もの大幅な増加に転じた。
受験関係者は「今年4月から大阪府の新たな高校授業料無償化制度が始まった。これを機会に『中学から私学進学』を考える家庭が増えた可能性がある」と分析している。
ただ、大阪府の高校授業料無償化の恩恵を受けると思われた最難関校の大阪星光学院が前年比30人減と過去10年間のなかで2番目に少ない応募者数(707人)となったのは予想外だった。
高槻、さらに人気上昇 開明中は続伸
最難関校に続く、難関校グループのひとつ、高槻は17年の共学化以降、2022年度(1874人)、23年度(2060人)と応募者を大幅に増やし、24年度(2217人)もさらに増加。小学校の受験担当の教師は「最近は最難関校の学校よりも高槻のほうが志望順位が高いケースが見られる」という。
大手塾の中学受験の進路指導者は「四天王寺や大阪星光学院の応募者減は、高槻の人気の影響を受けたと考えることもできる。高槻の競争率が上昇していることを踏まえ、来年度以降は慎重な受験パターンを組む必要がある」とアドバイスを送る。
また、京都大の合格実績や理系教育に定評がある開明中学校は、スーパー理数コースが難化。入試制度(方式や日程)の変更で受験しやすさもあって、22年度(1530人)から23年度(2038人)は志願者が大幅に増え、24年度(2142人)も104人増えた。
付属校は人気の〝高止まり〟
大学付属校人気は近年の右肩上がりの人気から、高止まり状態となった。
「関関同立」の系列校の志願者は、昨年に続いて高い人気を保ったままの足踏み状態。
昨年より増加したのは同志社(京都)が77人増、同志社香里(大阪)が30人増、立命館(京都)が22人増。なかでも国算2科目の受けやすさと独自の教育内容が魅力の同志社は大きく伸ばした。逆に減少したのは関西大学第一(大阪)が58人減、関西大学中等部(同)が35人減だったが、塾の進路指導担当者は「ともに昨年の大幅増の反動とみられる」と分析している。
最難関校の大半は例年並み
関西圏の最難関校グループ「トップ9」(灘・甲陽学院・神戸女学院・大阪星光学院・四天王寺・東大寺学園・西大和学園・洛南高等学校附属・洛星)の受験動向はどうだったのか。
コロナ禍の入試で「トップ9」は軒並み応募者を減らしたが、23・24年度とほぼコロナ前の状況に戻った。
男子校では、灘が747人で、過去10年間で20年度に次ぐ2番目の応募者数。関西圏からは11人減少したが、関西圏外からの応募者は増加。全国のトップ層の受験生が集まった。甲陽学院も灘と同様に2日間にわたって入試を行い、400人前後の応募者数を集めて、安定した人気を示した。
女子校はどうか。四天王寺は、全体の応募者が29人減少したが、医志コースや英数Sコースに比べると、英数コースの専願が増えた。神戸女学院は、過去10年間の応募者数に大きな増減はなく、240~250人前後で安定。西大和学園は、男子の応募者が減ったが、女子はここ数年のなかでも最多となった。