【北陸新幹線開業】大阪府民の「乗り継ぎで不便になった」に対応 待ち時間楽しむ映像コンテンツも

 北陸新幹線の金沢─敦賀間が今年3月に開業し、東京と福井が新幹線一本で結ばれた。ところが、関東方面からの利便性が大きく増した一方で、大阪府民からは逆に「不便になった」という声も上がる。これまで大阪府民の北陸への〝足〟だった「サンダーバード」が新幹線開業に伴い、敦賀駅止まりとなり、金沢や福井へ行くには乗り継ぎが必要になったからだ。(佛崎一成)

開業日当日の福井駅の盛り上がり

 新たに開業した駅は、石川県内に小松、加賀温泉の2駅。福井県内は芦原温泉、福井、越前たけふ(新設)、敦賀の4駅だ。まずは、福井を終点に考えたときに、東京と大阪からの到着時間がどのように変化したのか。
 東京から福井へは、これまで米原で東海道新幹線から特急しらさぎへの乗り継ぎで、最速3時間24分だった。これが北陸新幹線ルートの開業で、到着時間が最速2時間51分となり、約33分短縮された。
 一方の大阪はどうか。福井までの最速はこれまでの1時間47分から1時間44分に3分短くなった。ちなみに金沢までは2時間9分(22分短縮)だ。

北陸新幹線の新大阪までの計画ルート

 大阪からの到着時間だけを見ればさほど変化はないと映るが、新幹線の開業区間でサンダーバードの運行が終了し、大阪府民にとっては敦賀駅で面倒な乗り換えが必要になったことが一つ。もう一つは新幹線を併用することで料金負担も5280円から6210円になったこと。大阪府民が「不便になった」と口にするのはこうした理由からだ。

福井県内の芦原温泉駅に停車する北陸新幹線


 ただ、敦賀駅での乗り換え発生についてはさまざまな対応がなされている。例えば、国は新幹線と特急の上下乗り換え方式を採用。また、福井県なども取り組みを進めており、県新幹線建設推進課の林裕之課長は「乗り換えをいかに楽しんでもらえるかの準備を進めてきた」と話す。

北陸へのワクワク高める

 その一つが乗客全員が乗降する敦賀駅への大型LEDビジョンの設置だ。高さ幅ともに2㍍のディスプレイは側面も映像を映し出せる3面式になっており、「JRと北陸3県と協力して、北陸の食や観光情報などを流すことで旅への期待感を高めている」(林課長)

敦賀駅のLEDビジョン

 さらに今後の取り組みとして、デジタル地域通貨がもらえるキャンペーンを企画。乗り換え時にスマホを使って抽選で地域通貨をプレゼントする企画で、福井県内での買い物に使えるようにする。「詳細はこれから詰める」(林課長)という。
 ところで、現在の利用状況はどうか。林課長によると、新設の越前たけふを除く県内3駅周辺の来訪者を開業前と比べた場合、関東圏からの伸び率が170%弱と大幅に増。一方の関西圏も約11万人から約13万人と120%に伸びた。ただし「開業直後で今後を注視する必要はある」(林課長)

全線開業は2040年か

開業日当日の敦賀駅のコンコース

 府民が期待したいのは残る大阪までを繋ぐ北陸新幹線の全線開業だ。1997年に高崎(群馬県)─長野が結ばれ、2015年には長野─金沢が開業した。そして今年、金沢─敦賀が結ばれたことで、残りは大阪までの約140㌔。
 この辺りの進捗については17年にルートが敦賀から小浜、京都、京田辺を経て新大阪に至る小浜・京都ルートに決定。現在は事業認可申請に必要な環境アセスメントで5段階中の3番目のステップ「現地調査・予測・評価」をしている。
 また、都市部を通る難しい工事となるため、昨年度からは「北陸新幹線事業推進調査」として、駅の位置や工法の検討、地下水への影響確認などを行っている。
 一方、認可・着工に向けては、建設財源の確保も不可欠だ。政府・与党において速やかに財源確保に向けた議論を進めるよう、沿線の自治体・経済界が連携して要望している。
 林課長は「来年度の政府予算に、着工のための予算を計上してもらえるよう国などへ要望している」と話す。
 17年時点での国が出した工期は着工からおよそ15年。その計算でいけば、全線開業は2040年あたりと予想される。
 林課長は「昨年、大阪で北陸新幹線のPRに取り組んだときは、敦賀まで繋がることを知らない人も多かった。北陸新幹線は南海トラフ巨大地震の際の代替ルートにもなる。北陸と関西は観光や就職などで結びつきが強い。全線開業が関西に大きなメリットをもたらすということを、引き続きPRしていきたい」と話している。