【短歌に込める経営者の想い③】Team Energy 中村誠司社長

(歌人・高田ほのか)

「人はだれでも社長になれると思ってるんです」

中村誠司社長は、もっと自由に、もっとおもろいことがしたい!と、創業して25年勤めた中央電力の社長の座を譲り、経営者を育て共経営を営むための会社、Team Energyを立ち上げた。 

「主婦や寝たきりの人、少年院からでてきた人も、それぞれにふさわしい事業がある。アイデアベースならどんな人でも新しいビジネスを考えられる。ビジネスにおいて重要なのは、最後までやりきれるか否か。やりきるためには、いろんな人の力が合わさった方がいい。会社は〝あうやしろ〟って書くでしょう」とにっこり。 

中村社長(右)と高田ほのか

中村社長は小学1年生のころから中学3年生まで、地元の生駒山に毎日のように登っていた。

「足を踏み入れると、この道はここで行き止まりやとか、こんな方向に続くんかとかがわかってきて、自分の足元から地図ができていく。それがおもろくてね」 

自らの足で確かめて進んでいくことができる登山は、五感を研ぎ澄ませ、信じた道を切り開いてゆく中村社長の性分に合っていたのだろう。 

中村社長はそれぞれの経営者がつくる事業を木に例え、その木同士が共生し、成長し続ける森を育てている。理想とするのは整然と並ぶ竹林ではなく、大きさも形も異なる多種多様な木がうごめく森。

「個性豊かな社長たちがチームの力で常識を覆し、世界を幸せにするさまざまな事業を生み出していきたい」。綿密にして大胆、そしてかぎりなく豊かな人品。それは、中村社長が毎日登っていた生駒の森そのものだ。 

インタビューを終えて席を立つと、「小6のときの日記、読んでみてください」と、B5サイズのノートを手渡してくれた。帰りの電車で開くと、〝生駒山〟というタイトルのなかに、「前へと一歩一歩足を出して行く」と力強い字が書かれていた。

【プロフィル】歌人 高田ほのか 大阪出身、在住 短歌教室ひつじ主宰。関西学院大学文学部卒。未来短歌会所属 テレビ大阪放送審議会委員。「さかい利晶の杜」に与謝野晶子のことを詠んだ短歌パネル展示。小学生のころ少女マンガのモノローグに惹かれ、短歌の創作を開始。短歌の世界をわかりやすく楽しく伝えることをモットーに、短歌教室、講演、執筆活動を行う。著書に『ライナスの毛布』(書肆侃侃房)、『ライナスの毛布』増補新装版(書肆侃侃房)、『100首の短歌で発見!天神橋筋の店 ええとこここやで』、『基礎からわかるはじめての短歌』(メイツ出版)  。連載「ゆらぐあなたと私のための短歌」(大塚製薬「エクエル(EQUELLE)」)