【わかるニュース】衆院補選全敗 岸田総理「詰み」!?

少子高齢化の日本。もう待ったなし!!
参院予算委員会での岸田総理=2024年4月24日(つのだよしお/アフロ)

 自民党の裏金問題で揺れる通常国会最中の衆院補選。すべて自民の議席だった選挙区で不戦敗含め3タテを食い、岸田総理の周辺はにわかに慌ただしくなってきた。総選挙勝利から今秋党総裁選まで大きな選挙がまったく無い〝黄金の3年間〟をおう歌していたはずの総理。〝伝家の宝刀〟衆院解散権もにわかには使えない状況にまで追い込まれ、党内では「もう岸田では選挙を戦えない」とのダメ出し論が噴出。外圧円安に揺さぶられ続ける〝悪いインフレ〟下で、したたかな岸田総理の次の一手は?

少子高齢化の日本。もう待ったなし!!
政治の劣化、対策遅れに遅れ

自民の自滅「補選3タテ」

 まず衆院3補選を総括。
 東京15区(お台場などがある江東区)は2代続けて自民党現職議員が刑事事件で逮捕起訴され辞職。その影響で自民は候補者擁立断念。当初有力とみられた都ファ推薦の無所属・乙武洋匡(48)は5位に沈み、2年前の参院選に続き敗北。区長選で惜敗し、今度は共産の支援受けた立憲・酒井菜摘・前江東区議(37)が混戦を制した。
 長崎3区(佐世保市や五島列島など)は裏金問題で自民現職が立件され辞職。次回総選挙は10増10減の合区対象で消えるため、1、2区に現職がいる自民は出馬見送り。前回、立憲は小選挙区落選・比例復活の現職・山田勝彦議員(44)がいったん辞職し再出馬して当選。地方組織の弱い維新は自民の受け皿になれず。
 島根1区(松江市など県東部)は、小選挙区実施以来自民が勝ち続け細田博之・前衆院議長は全県区時代合わせ11回連続当選。その前の父親・吉蔵氏(党総務会長など歴任)も連続10回当選で負け知らず。その博之氏は統一教会との関係性や安倍派トップとしての裏金仕組み説明、女性記者セクハラ問題など数々の疑惑に十分答えぬまま任期途中他界。自民は財務官僚を後継に担いだが、安倍派消滅で派閥ぐるみ選挙できず、弔い合戦の勢いも出ぬまま選挙区初敗北。当選した立憲元職・亀井亜紀子(58)は父が自民の元国土庁長官で元津和野藩主の家系。
 こうして眺めると自民3タテ敗北の原因が透ける。「〝身から出たサビ〟で有権者に見放された」という訳だ。

大義語れぬ岸田総理

 当事者の岸田総理。年頭は「春闘賃上げと定額減税の効果が出る6月解散。総選挙に勝ち政権維持決め、秋の党総裁選で続投」との青写真を描いていたはず。ところが党裏金問題ですっかり計算が狂った。中央突破を意味する「6月強行解散、総選挙に自公で過半数維持できれば党人事・組閣で求心力回復」も不可能ではないが、一般議員には〝やぶれかぶれ解散〟と映る。
 それでも岸田総理は過去に党裏金問題で「勝手に派閥解散、政治倫理審査会に突如出席」と〝ライバルつぶしサプライズ〟を連発してきたから、一般議員は「いきなり党三役や内閣改造を仕掛け、国民人気の高い石破・元幹事長や小泉・元環境相を要職に起用する気では?」「いや、得意の外交分野で北朝鮮電撃訪問」と疑心暗鬼は広がるばかり。
 安倍元総理は「アベノミクスの後は改憲」と明確なプランがあった。しかし岸田総理は「何がしたいか?」が今もはっきりしない。党首討論も逃げてばかりだし〝聞く力〟はあってもキャッチフレーズの「新しい資本主義」に具体性は薄い。「オレは現実主義者」との自信も、言い換えれば「行き当たりばったり」としか聞こえない。

今後の主な政治日程
2024年5月26日 静岡県知事選投開票(自民系候補敗北なら衆院補選と併せ4連敗に)
6月13日~G7首脳会議(イタリア)
6月23日 通常国会閉幕(裏金問題に端を発した政治資金規正法改正案の行方は?)
6月下旬 定額減税実施(納税者を対象に所得税1万円、個人住民税3万円を減税)
7月7日 東京都知事選投開票(都民ファーストちょう落気味、小池百合子知事の去就は?)
9月30日 自民党岸田文雄総裁任期満了(この日までに選挙実施)
10月    臨時国会召集?(自民新総裁誕生なら、冒頭で首班指名か?)
11月5日 米国大統領選(再びバイデンVSトランプの再戦確実)
2025年1月    通常国会召集(憲法で1月に規程)
1月20日 米国新大統領就任式(どちらが勝っても2期目で4年間限り)
夏  参議院議員選挙
10月    衆議院議員任期満了

自民は政権手放さぬ

 自民議員は生き残りに必死。保守王国・島根で2万5000票の大差で敗れる結果に、ある議員は「島根で勝てないなら、他のどこも勝てない」と沈痛だ。
 党裏金問題は自民の根幹に関わる。かつて日本の公共事業はほぼ談合で受注先が決まり、そのお礼に総工費の3%程度が政治家に団体献金として環流され、政官財の「持ちつ持たれつ」図式が出来ていた。それが2000年に団体献金が禁止され、代わって登場したのが企業によるパーティー券購入の抜け道。政治資金規正法改正案では与党仲間の公明も含め他党すべてが政党交付金などの〝政治とカネ〟の流れを明らかにすることに賛同しているが、自民だけは「政治活動に関わった個人や企業がすべて明らかになると国益に反する」と消極的なのは既得権を失いたくないから。
 岸田総理が支持率回復を狙って、どういう改正案をまとめるのかが当面の焦点。自民はかつて一貫して「ダメなものはダメ」と政権の大義に筋を通してきたが、09年に民主政権誕生で下野し、政権復帰後は「何が何でも政権与党」に趣旨替え。仮に自公で過半数割れしても、維新や国民などの「ゆ党」(あいうえおで〝野党と与党の間〟の意味)と手を組み政権の座にしがみ付くのは必至。

老若男女使い分け立憲

 はっきりした対抗勢力・立憲は、まだかつての民主のような熱烈な国民からの待望的な支持率は得ていない。
 政権時代の民主から、鳩山・元総理や前原・元国交相は去ったが小澤・元自民党幹事長、岡田・元党代表、蓮舫・元党代表、菅直人・元総理、野田・元総理など主だったメンバーは落選や引退もせず残った。こうした長老を抱え、閣僚経験のない泉代表は立憲だけでは支持率が足りない事を知っている。国民や維新に巧みに秋波を送りながら、他方で共産やれいわとも共闘、うまく支持を伸ばして反転攻勢を掛け、野党第1党としての議席数を維持している。
 本音は15年前の政権当時、少子高齢化到来をいち早く見据え「子ども手当や高校授業料無償化」など、現在の自公政権や維新が打ち出している子育て政策の先取りをした自負がある。課題は当時から変わらず地方組織が弱く、官僚に政策立案を手伝わせる手練手管も低い。自公政権に嫌気が差している有権者の信頼回復こそが再生のカギ。

手詰まり感強い維新

 維新は補選中に馬場代表が「立憲を叩きつぶす。立憲に投票しないで」と同じ野党の足を一方的に引っ張った。藤田・党幹事長は「連立政権入りより後2回の総選挙で単独政権へのメドを」と力説するが、自身の選挙区である大阪府四條畷・寝屋川・大東3市で立て続けに市長選で自派候補が破れてはどうにも締まらない。
 かつての橋下徹・元府知事、現在の吉村洋文府知事とアイドル的な個人人気に頼り過ぎて、「まず地方選で足場を固め地方議員を国政にステップアップ」という作戦そのものに限界が見える。候補者選びが玉石混交の宿命で不祥事スキャンダルも相変わらず多い。
 元々野党とは一線を画し、国政では自民党の安倍・菅コンビと蜜月、地方では公明を味方にしていたが、今では共にたもとを分かった。地方政界で公明が敵対化したことと、大阪都構想挫折後の目玉だった関西・大阪万博の評判が最悪で浮上のきっかけがつかめていない。馬場代表は「関西以外の小選挙区で勝つのは厳しい。ウチは企業・団体・労組の後ろ盾がないので、自分たちでもう一度票を掘り起こすしかない」と厳しい表情だ。

投票して日本再興を

 かつて政権交代は「現状を変えよう」との高揚感であふれていた。しかし、今は少子高齢化が切実で地方の過疎化、都会の労働者不足での産業衰退が現実に迫り「どうしたら?」との危機感が強い。
 元々日本は欧州などに比べ投票率が低い。若者は「投票しても何も変わらない。入れたい候補者がいない」との失望感から、投票権が18歳以上に引き下げられても足を向けなかった。結果として固い支持層を持つ政党が常に有利。アベノミクスによる金融緩和と円安・株高によるぬるま湯に慣れ、政治への関心をますます失わせる結果に。
 少子高齢化でも日本人が幸せになれる処方箋を書いてくれる政治家を、有権者一人一人が自分のため家族のためを考え、そろそろ本気で選ばなければ事態は何も進まない。