【外から見たニッポン】日経平均とS&P500の違い

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏
【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。

 2024年になって株価が急上昇しています。日経平均は34年振りの高値を更新し、新NISAがはじまったことで一般投資家からも多額の資金が株式市場に流れ込んでいるようです。

 やっとデフレが終わり、モノの値段が上がり出し、本来のあるべき経済の状態になってきました。

 明るい兆しが見えて来たのは良いことですが、株高の中身を見ると外国人投資家が圧倒的に買い越して大量の資金が流入しているのに対し、日本人投資家は売り越し状態。外国人がもっと上がると信じている日本株を、日本人は信じられず売っている。日本人の多くには「そろそろ下落するぞ」という不安があり、「そんなに簡単に過去最高を超えないだろう」という疑心暗鬼の状態にいるのかもしれません。

 そんな日本人に対して、外国人投資家は株価と実際の企業価値を比較し、グローバルな市場の中で安全性や成長性などさまざまな要素を比較検討した結果、まだ日本株は伸びると判断しています。為替が円安と言うだけではありません。

 より詳しい情報を得られて、身近でモノやサービスを使用している日本人の方が本来なら正しく企業価値を判断できるはずなのに、不思議な現象です。

 われわれ日本人はもっと日本企業のことを、彼らのポテンシャルを信じ、それに賭けてみても良い気がします。

 新NISAがはじまって以来、日本人投資家の資金は海外マーケットへ向かっているのが実情です。

 その理由は明確で、長年に渡って高い成長性をみせているからに他なりません。

 アメリカの代表的な指数の一つ「S&P500」の1989年12月の価格は353・4㌦。対して2024年1月31日のS&P500の価格は4845・65㌦。この34年間で13・7倍に増加。また前年より株価が下がった年は34年間で9回だけ。

 もし1989年に100万円を日経平均に投資していたら、その額は100万円を少し下回っていますが、S&P500に投資していたら1370万円になっています。

 この実績を見せつけられたら確かにS&P500やその他の米国株、または投資信託に投資したくなります。

日経平均とS&P500

 アメリカで1990年に時価総額トップだった企業はGE、エクソンモービル、ファイザー、シスコシステム、シティグループ、ウォルマート、ボーダフォン、マイクロソフト、AIG、メルク。2023年末ではマイクロソフト、アップル、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、メタ、テスラ、バークシャー・ハサウェイ、イーライリリー、ブロードコム。

 アマゾンもグーグルもエヌビディアもメタもテスラもブロードコムも1989年には存在していなかった企業ばかり。アップルも存在はしていましたが、今の様な圧倒的な存在ではありませんでした。これら企業の誕生と成長がS&P500を13・7倍に押し上げた原動力なのです。

 ヤフーやアマゾン・ドット・コムが誕生し、マイクロソフトがWindows95で世界を席巻し、今は亡きAOLがTime Warnerを飲み込み、アップルがスティーブジョブズによって大きく羽ばたいていく時代をニューヨークで過ごしていた私は、とてつもないエネルギーと躍動感に包まれた世界を肌で感じていました。

 今、日本政府はユニコーン企業の育成に力を入れようとしています。そしてそこに莫大な資金も投入しようとしています。能力のある若者や柔軟な発想を持った起業家が今後日本にも登場し、政府のサポートを得て、アメリカで次々とユニコーン企業が誕生した時の様なエネルギーと躍動感を日本でも創り出してもらいたいものです。