「得点」の実利に加え、精神面でも〝追い風〟に
今では英検2級の取得は府立上位校の合格パスポートになっている。なかでも大阪の子どもたちにとってあこがれの府立高トップ10校の受験生の6割の生徒は「72点」の得点保障を得た状態で試験に臨んでいる。「ここ2年はC問題が易化の傾向にある」と言われるが、「(英検2級の取得は)上位校を目指すなら、受験の最低条件といえる」(開成教育グループの上席専門研究員、藤山正彦さん)。実際、今春の合格者平均点を見ると、英語C問題は60.6点で、英検2級が保障してくれる72点を下回っている。英検2級を取得した受験生も「当日、プレッシャーを感じないでC問題に取り組めた」との声も多く、「得点」という実利面に加え、精神面でも〝追い風〟になっている。
高い方のスコアが採用
府立高入試では2017年度から、英検やTOEFL iBT、IELTSの成績を入試得点に反映できる制度がスタート。なかでもその中心は英検で、2級を持っていれば80%、準1級で100%の得点が保障される。実際の入試点数に置き換えると、英語は90点満点だから2級があれば72点に換算される。そして当日入試のスコアと比べ、高い方の得点が採用されているのだ。一発勝負の受験生にとって、高い方のスコアが採用される意味は大きい。
17年の導入時に英検を中心とした外部検定を活用して入試に臨んだのはわずか344人。ところが制度開始から7年経った今春は3999人と10倍以上に膨らんだ。このうち府立トップ10校の受験生が大多数を占め、10校を受験した6割の生徒は得点保障を得た状態で試験に臨んでいる。
これまで、英語C問題は全得点の半分以上を占める長文読解が4~5題も連なる。最後の英作文も難関だ。受験界からは「この問題量をわずか30分で仕上げなければならない制限時間の短さが最大のネックとなっている」と言われてきた。
そのような声を反映してか、受験生のC問題対策も進んだこともあり、「ここ2年はC問題が易化の傾向にある。実際に合格者平均が英検2級の72点保障に迫っている」(藤山さん)
それでも今春の合格者平均点を見ると、英語C問題は60・6点で、英検2級が保障してくれる72点を下回っている。
実際に英検2級を取得してトップ10校の一校を受験した生徒からは「72点を確保しているので、プレッシャーを感じずに当日のC問題に取り組めました」との声も聞かれた。
英検の取得を通じて、他教科の勉強にも好影響
そこで、府立高入試へ向けた英検ニーズの現状について、大阪府内に3校を展開し英検の実績がある、「ペンギン英会話スクール大淀校(本校)」(北区大淀中)の受験担当者に聞いた。
同スクールによると、コロナが20年に始まり、「文部省後援」入学試験の指標として、外部英語試験活用方式のうち英検が過熱し、「英検集中対策を行っているため、その期間にのみ入会する方も多い」という。入会者は「バイリンガル教育をさせたい親の子ども」「私立小学校や塾から言われて、英検について意識付けされた小学生」「私立高校、大学入試を意識した小学生」「海外を意識した私立大学を目指す中学生」が多いという。
そして、受験業界のプロからみて、「英検2級と府立高入試C問題の難易度」をどうみているのか尋ねた。
担当者は「中学3年生で(高校卒業程度の)英検2級を取得するのは一握り。それだけ難易度は高い」と指摘。C問題については、「分量が多い。他の教科も並行してC問題を受験するこどもにとっては苦痛があるのでは」との見解だ。そして、英検のメリットについては「英検の取得を通じて、英語を好き、得意になってもらうことが他教科の勉強時間の増加になる。結果的にこどもの余裕につながる」と述べた。
そして、塾での教え方の特徴、英検対応の授業、具体的にどんな授業を進めているかを聞いた。
同塾の理念は「世界に通用するクリエイティブな人材の育成」を上げており、「単語を丸暗記するような苦行はしない。楽しむ。のびのびが基本」と指摘。具体的には、「コツは、L、Wに注力すること」として、一つの英検リスニングを何度も聞き、書き方を教えている。
ライティングに対しては、「環境問題、テクノロジー、時事問題等、トピックに出てきやすいものを普段のレッスンから意識付けし、トピックに対して意見を持ち議論する場を設けている」と英検の取得、さらに塾の理念の追求を目指している。