【記者の投資勉強会】
日米韓の株式市場でAI関連銘柄への資金集中が続いている。一方、外国為替市場では円安が加速し、円の実力を示す実質実効為替レート(※)は1970年の統計開始以来の最低水準となっている。背景には、米国のインフレ再燃懸念に加え、高市早苗首相が主導する経済財政運営の指針「骨太の方針」を巡り、政府が日銀の利上げをけん制しているとの見方が市場で強まっていることがある。
日経平均株価は時価総額加重型ではなく株価平均型の指数のため、値がさ株ほど指数への影響が大きい。上位10銘柄で構成比率の5~6割を占め、半導体検査装置大手のアドバンテスト(約13%)、半導体製造装置大手の東京エレクトロン(約12%)、ソフトバンクグループ(約8・5%)などが指数を押し上げている(26年6月現在)。
韓国総合株価指数(KOSPI)は年初来で約100%上昇(26年6月現在)。AI向け超高性能メモリー「HBM」を量産するサムスン電子とSKハイニックスが指数をけん引しており、25年は19業種で株価が上昇したのに対し、26年は電気電子以外の多くの業種が下落に転じるなど、値動きの偏りが目立っている。
為替市場では、ドル円相場が161円台で推移し、約39年ぶりの円安水準だ。従来はエネルギー輸入がドル建て決済であることから、原油高が進むと原油購入時のドル買い・円売りが増え、円安圧力になってきた。しかし現在は、中東情勢の緊迫化前の水準まで原油価格が下落する一方でも円安が続いており、米国の根強いインフレ懸念に伴う利上げ観測が新たな要因になっていた。
米国では消費者物価指数(CPI)が高止まりする一方、7月2日発表の雇用統計では、失業率は改善したものの非農業部門雇用者数の伸びは鈍化し、雇用情勢に変化の兆しも見える。米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利の据え置きを志向しているとみられ、日米両当局とも、これ以上のドル高・円安の進行は望んでいないとの見方が市場では広がっている。
もう一つの円安要因として市場が注目するのが、日銀の金融政策運営を巡る政府の姿勢だ。政府が7月に閣議決定を目指す「骨太の方針」の原案には、高市政権が掲げる〝強い経済〟の実現には日銀の「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要だ」との文言が盛り込まれた。金融市場では、追加利上げに慎重な政権が日銀をけん制したとの見方が広がった。これを受け、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは7月3日、一時2・810%まで上昇。約30年ぶりの高水準となった。
政府が金利上昇を抑えようとするほど、財政拡張路線への警戒からマーケットがかえって金利上昇を織り込むという展開も見られる。財政拡張と利上げけん制が組み合わさることで、円安とインフレ再燃が連想されるためだ。
一方、高市政権が成長戦略の柱に据える半導体・AIインフラ関連投資では、政府の後押しを待たずに民間企業がすでに投資を加速させている。JX金属、フジクラ、レゾナック、村田製作所、三菱電機など、AI・半導体・光通信・電子部品・冷却・素材といった分野で日本企業の設備投資が広がっており、市場のシグナルを受けて自ら資本を投じる動きが先行している状況だ。長期金利の上昇は設備投資には逆風となりかねず、専門家の間では、政府は投資を主導するというより、人材育成や土地利用、許認可を巡る規制緩和など、投資の障壁を取り除く役割に徹すべきだとの指摘も出ている。
為替介入についても、市場や専門家の間では「いつあってもおかしくない」との見方が広がる。ただ、原油価格が落ち着く一方で、米国のインフレ再燃懸念から利上げ観測が高まる局面では、介入の実弾を投じるタイミングは難しく、効果が薄れれば打つ手を失いかねないとの懸念もある。7月の米雇用統計発表後にドル円が一時160円台まで円高に振れた場面では、覆面介入の観測と、雇用統計の結果を反映したとの見方の両方が出ており、事前予告のない為替介入の可能性を指摘する声も上がっている。
※貿易相手国・地域との為替レートを貿易額に応じて加重平均し、物価変動を加味した総合的な指数。
