【記者の投資勉強会】
「今日の天気は?」「大阪のおすすめは?」ChatGPTに質問すると、数秒で答えが返ってくる。まるでスマートフォンの中でAIが考えているように感じるが、実際には世界中の巨大なデータセンターが膨大な計算を行っている。
利用者が送った質問はインターネットを通じてデータセンターに送られ、そこでAIが文章を作成して再び端末へ返している。この仕組みを支えているのが、米マイクロソフトの「Azure」や米アマゾンの「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」などのクラウドサービスだ。企業は自前で巨大なコンピューターを持たなくても、インターネット経由で計算能力を借りられる。
データセンターの中では、「GPU」と呼ばれる半導体が大量に並び、24時間動き続けている。もともとはゲームの画像処理用に開発されたが、AIの計算に向いていたため、現在は生成AIの中心部品になった。GPUで特に存在感を高めている企業が米エヌビディアで、ChatGPTをはじめ多くのAIサービスで使われている。
ただし、エヌビディアだけでAIが動いているわけではない。GPUを設計する企業、実際に製造する工場、データを記憶するメモリメーカー、さらに材料や検査装置を供給する企業まで、多くの会社が役割を分担している。添付の「半導体産業マップ」を見ると、AIを支える世界の役割分担が見えてくる。

半導体は大きく二つに分かれる。一つは「ロジック」で、CPUやGPUのように計算や制御を行う頭脳部分。もう一つは「メモリ」で、データを保存する役割を持つ。パソコンに例えれば、ロジックが「考える部分」、メモリが「覚える部分」だ。
エヌビディアが設計したGPUを実際に作っているのは台湾TSMCや韓国サムスン電子などの受託製造会社(ファウンドリ)である。AIブームの恩恵を最も受けている企業だ。
メモリには大きく二種類ある。一つは「DRAM」で、AIが計算中に一時的にデータを置く作業机のような役割を持つ。電源を切ると内容は消えるが、読み書きが非常に速い。もう一つは「NANDフラッシュ」で、写真や動画、AIの学習データなどを長期間保存する倉庫のような役割を担う。スマートフォンやパソコンのSSDに使われているのがNANDだ。
最近では、このDRAMをさらに高速化した「HBM(高帯域幅メモリ)」が話題になっている。HBMはGPUのすぐ隣で動き、大量のデータを超高速で受け渡しできるため、生成AIの性能を左右する重要な部品だ。現在は韓国のSKハイニックスとサムスン電子、米マイクロン3社の寡占状態にある。

一方、NANDでは日本のキオクシアが世界有力メーカーの一社だ。AIサービスが広がるほど、膨大なデータを保存するSSD需要も増えるため、キオクシアのようなNANDメーカーにも注目が集まっている。
GPUやメモリがAIの心臓部なら、それらを作れるように支えているのが日本企業だ。半導体そのものよりも「作るための道具」と「材料」が強みになっている。信越化学工業やSUMCOはシリコン材料で世界有数のシェアを持ち、東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテック、ディスコなどは製造や検査に欠かせない装置を供給している。AI向け半導体が増えるほど、こうした日本企業の需要も増える構図だ。
最近は中国企業の追い上げが目立つ。SMIC(中芯国際)は半導体製造、CXMTはメモリ、NauraやAMECは製造装置で存在感を高めている。中国は、スマートフォンや家電向けなどで使われる成熟世代半導体や、従来型の露光技術「DUV」を中心に急速に力を付けている。DUVは高性能な印刷機のような技術と考えると分かりやすい。一方、AI向け最先端半導体には、さらに細かい回路を描ける「EUV」が必要で、この分野ではなお海外勢が先行している。
AI向け最先端半導体には、さらに細かい回路を描ける「EUV」という超精密装置が必要になる。これは〝ナノレベルの印刷機〟とも言える技術で、現在はオランダのASMLが事実上独占している。また、AI性能を左右するHBMでも米国や韓国勢が先行しており、中国との差はなお大きいとみられている。
世界の半導体地図を眺めると、米国は設計、台湾は製造、韓国はメモリ、日本は材料と装置、中国は量産力強化というように、それぞれ得意分野が異なることが分かる。AI時代の競争は、一社の勝敗ではなく、サプライチェーン全体の力を競う時代に入っている。
