手に職のある働き方 目指せ「シェービング女子」未経験からシェービングのプロという道

 大阪府内と兵庫県内に美粧館(美容室36店舗)と理髪館(理容室23店舗)を展開する株式会社マツモト。社会全体で女性が働き続けるための環境整備が求めらる中、同館で生き生きと働く女性理容師を取材した。

 理髪館なんば本店(大阪市中央区難波3丁目)に入ると、まずは女性スタッフの多さに驚かされる。街の〝散髪屋さん〟のイメージとは少し違う、活気の中にある温かで柔らかな店内の雰囲気に安心させられる。

 同店は平日は約200人、週末や祝日は一日約350人が来店する。年末のある日には約500人のお客さんが身なりを整えたこともあるという繁盛店だ。

 同店で店長をサポートし、スタッフへの目配り気配り、そして顧客のシェービングに奔走する女性主任第1号の島袋麗瑛さん(41)は「働きがいがある職場」と胸を張る。

見て覚えるのではなく、やって覚える

 島袋さんは入社13年目。「丁寧に教えてもらえた」と、まったくの未経験で入社してシェービング技術を習得した。ここでは〝技を盗め〟ではない〝やって覚える〟教育制度が充実。先輩からの丁寧な指導でメキメキと腕を上げた。今ではシェービング女子会の会長を務め、〝シェービング女子〟をまとめる立場でもある。

 「未経験から給料をもらえる。ほかにはない魅力です」と島袋さん。年齢、経験は問わず20万円の給料からスタート。もちろん技術を習得し一人前なれば給料はアップする。島袋さんは「技術を磨いて顔そりの感覚をつかんだ時は何よりうれしかった」と振り返る。「眉毛、肌質、ひげは人それぞれ。顔は覚えてなくてもひげをさわると前に担当した人かどうか分かる」と、経験を重ねて習得してきた技は、もはや〝職人〟だ。

 仕事は分業制で、担当するのは顔そりとシャンプーのみ。実際に40歳、50歳からこの仕事を始めた人もいる。さらに、60歳を超えて理髪館の門をたたき、働きながら3年間の通信教育で理容資格を取得した人もいるという。

女性の採用を積極的に

 理髪館を運営するマツモト(大阪市西区南堀江1丁目)の松本義光会長(79)は、先代から「スタッフは大切にしなさい」の言葉を受け継いできた。理髪館で働きたいと思ってもらえる人は〝金の卵〟として、入社の入り口は広くやさしくを実践している。

 「今しんどいけど、がんばって」―。島袋さんは見習い教育のまっ最中で、「落ち込んで涙を流している」新人に声をかける。自分が見習いだった時の姿と重ね合わせ、少しでも早くひとり立ちできるように優しく見守る。

 同社には現在、正社員とパートで110人の女性が在籍している。松本会長は「5割までもっていきたい」と女性の採用を積極的に行っている。女性が働きやすい環境が整っているということだ。子育てが一段落した女性も「また働きたい」と戻ってくるケースも多い。さらに他の店を経験した人でも、労働環境の良さに改めて気づき、「戻りたい」と再び同僚になることもある。

 「ここで働いて絶対に後悔はないと思う。ここで働いて良かったと思ってもらえる」と島袋さん。「スタッフが幸せに過ごすこと」が松本会長の願い。シェービング女子の職人集団に入ってくれる仲間を、女子会全員が待っている。

<取材協力>株式会社マツモト/電話0120-591-222