タワマンバブル崩壊の予兆か 「転売苦戦」「ついに下落局面」か?

 不動産バブルの象徴的存在だった東京「晴海フラッグ」。しかし、最近では「転売が苦戦」「ついに下落局面?」など不動産バブル崩壊を予感させるような話がSNSなどで踊っている。本当なら大阪のタワマンの資産価値にも影響を与えかねない。果たして真相は?

汐留から勝どき・晴海方面の夜景(写真AC)

【東京・臨海エリア】晴海フラッグの異変 大阪タワマン市況への影響は

 YouTubeやSNSでは、東京五輪の選手村跡地に作られた「晴海フラッグの転売苦戦」「ついに下落局面」といった刺激的な言葉が躍り、今や不動産暴落の「先行指標」のように語られている。事実であれば心配なのは大阪のタワーマンション市場だ。大阪のタワマン市況に詳しい「TOWERZ(タワーズ)」の芝崎健一COOを直撃し、真相に迫った。(佛崎一成)

政府統計をあざ笑う 外国人比率40%超

 もともと6000万〜8000万円だった物件が2億円台で転売されるなど、不動産バブルの歪(ひず)みを象徴するマネーゲームの温床だった「晴海フラッグ」に変化の時が訪れている。
 分譲価格の約2倍で募集していた部屋が数カ月経っても成約せず、段階的に値下げを繰り返す事例が増えているのだ。一説には数百件単位で居住実態がないことも報道された。
 背景として、よく言われるのが、中国の富裕層が本国の不況で資金繰りに行き詰まり、日本の不動産から撤退している説だ。果たして本当なのだろうか。
 TOWERZの芝崎さんは「(晴海フラッグは)暴落ではなく是正。これまでは完成直後の価格でもまだ安すぎると判断され、上乗せして転売されてきた。今はいきなり法外な値を付ける人が現れ、さすがに売れずに値を下げているのが実態。下げたと言っても、元の価格よりは遥かに上がっている」と説明する。
 タワマンの値上がりを支える買い手の正体は、中国人富裕層を中心とする海外勢なのか。もし「(中国人富裕層の)日本の不動産からの撤退説」が本当であるなら今後、不動産価格の暴落を引き起こしかねない。
 だが、昨年11月に国土交通省が公表したマンション取引実態によると、2025年上半期に東京23区の新築マンション取得者のうち、海外に住所がある人の割合は3.5%だった。大阪府で2.6%、大阪市は4.3%と、外国人による購入比率はわずかだ。とすれば、仮に「撤退説」が本当だとしても価格への影響は限定的だと言える。
 ところが、芝崎さんが独自に行った調査は、その数字を根底から覆した。
 「我々は法務局の登記簿から名前をすべてチェックした。その結果、24〜25年に建設された大阪市中心部のタワーマンションのうち、多い物件では40%以上が外国人の所有だった。政府は『海外に住所がある人』しか見ていないが、実際には『日本に住んでいる外国人』も含め、膨大な海外マネーが流れ込んでいる」(芝崎さん)
 海外勢の中心は中国本土、香港、台湾の富裕層だ。中国などは送金規制がある中で、「たとえば5000万円の高級時計を両手首につけて入国し、日本で換金して軍資金にする」といった手法や、非公式な送金システムを使い、タワマンを買い占めているという。

転売増殖の温床「連件登記」

 こうした外国人需要が「出口の安心材料」となり、物件を転売して利ざやを稼ぐ転売ヤーが現在のタワマン価格暴騰の要因になっている。転売ヤーはなぜ、これほどまでに増殖したのか。芝崎さんが指摘するのは「連件登記」という手法の存在だ。
 「本来、不動産を買うには自分でお金を出して登記しなければならないが、この技を使えば、自分が1円も出さず、転売先の資金で登記を同時に済ませられる。つまり、『買う権利』だけを転売し、差額の数千万円を丸ごと手に入れることができる」(芝崎さん)
 うめきたのグラングリーン大阪でもこの手法が一部で横行し、転売ヤーを増殖させる温床となった。1億2000万円で買った権利が、完成時には2億円以上に化ける。汗一つかかずに8000万円をつかむ。そんな「マネーゲーム」が、今の高騰を支える柱の一つになっているという。

築後1年以内に売り出し3割も

 実際に大阪の新築タワマンでも転売ヤーの暗躍がすさまじい。昨年完成した梅田まで10分圏内の某タワマンは、完成直後に全戸数の2割にあたる40戸以上が転売物件として市場に出る「異常事態」が起きている。
 かつては5%程度だった転売比率が今や20%超。新築と転売が横並びで売られる前代未聞の状況に、デベロッパー(開発業者)側も「自分たちの新築が売れ残る」と頭を抱えている。
 ただ、この熱狂にも「終わりの兆し」は見え始めている。これまで市場を下支えしてきた金融機関の動きに変化が出ているのだ。
 「最近、住宅ローンの審査が通らないケースが出てきた。年収も借入状況も問題ないのに、理由を聞くと『過去5年間に3件の短期転売があるから』と。銀行は転売目的の個人を『住宅ローン』の枠組みから排除する方向に舵を切り始めた」(芝崎さん)

価格高騰の裏で、在庫は2年前の2倍に

下落の兆しは在庫数と販売期間

 では、タワマンの価格上昇はこの先、どこまで続くのか。価格が下がる前には必ず「動きの鈍化」の兆しが現れる。そのポイントとして芝崎さんが注視しているのが「在庫物件数」と「平均販売期間」だ。
 大阪市圏では、2年前まで約500戸だったタワマンの在庫数が、現在は1100戸と倍増している。さらに、売り出してから成約に至るまでの期間も、すでに3カ月から4・5カ月に伸びてきた。
 「成約数が落ち込み、在庫が溜まり始めた時、資金繰りに行き詰まった一部の転売ヤーが価格を下げ出す。それが引き金になり、周辺物件の連鎖的な値下げを招く」と説明する。
 さらに、不動産としての「正当性」を示すのが賃料だ。芝崎さんが見せてくれたデータでは、売買価格が急激な右肩上がりを描くのに対し、賃料の上がり方は緩やかだ。
 「健全な市場であれば両者は連動するが、今は売買価格だけが独走し、利回りが極端に低下している。賃料は実際に住む人の『給料』に縛られるため、無理な値上げはできない。売買価格と賃料の差がこれ以上開けば、投資としての魅力は消え、バブルの化けの皮がはがれることになる」と警鐘を鳴らす。

お祭りの終わり予測ではあと2、3年

 「今の大阪のタワマン平均価格は9000万円。会社員でも年収の12〜13倍のローンを組み、月々30万円の支払いに耐えて買っている。これが平均1億3000万を超え、月々の支払いが40万、50万円となった時が本当の限界値だ。私の予測ではあと2、3年。そこで大きな調整局面が来ると見ている」
 タワマン高騰の背景には、実需要ではなく「転売」という欲望で膨らんだ熱気が潜んでいる。この「お祭り」の終わりは、銀行の窓口から、あるいは一通の融資拒絶通知から始まるかもしれない。

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