少子化の中でも関西の中学受験者が増加している。大阪の高校無償化を背景に経済的ハードルが下がり、中高一貫校が一般家庭の選択肢に浮上。大学受験の優位性や多様な教育を求め、受験は「静かな大衆化」の局面に入った。
関西の中学受験、静かな大衆化 火付け役は高校無償化
少子化で子どもの数が減り続ける一方、中学受験は盛り上がっている。文部科学省の学校基本調査によると、全国の公立小中の児童生徒数は1989(平成元)年から4割以上減った。にもかかわらず、関西の受験者は2025年度が1万7583人と24年度より271人増。今年もまだ集計中だが増加する見込みだ。(竹居真樹)
関西では10人に1人以上が挑む中学受験。地域差も大きく、阪神間などでは受験率は3割に達する。盛り上がりの背景にあるのは、私立も含めた高校の無償化が大きい。特に大阪は、今年の入学者から世帯年収に関わらず授業料が完全に無償になった。
中学受験に高校無償化がなぜ影響するのか。開成教育セミナーなどの進学塾を展開する成学社の上席専門研究員、藤山正彦さんは「中学の授業料を頑張って支払えば高校からは授業料が無料になるから、経済的に中高一貫校を選択肢に入れられる家庭のパイが広がった」と指摘。加えて、「(中高一貫が)大学進学に有利なことが知られている」と分析する。
実際に同社の進学フェアでは、以前は「友達が受験するから着いてきた」など子どもだけの来場も多かったが、現在は真剣に受験を考えている親子の来場がほとんどだ。
「常翔学園(大阪市旭区)など従来は高校から、と考えていた層にも、中学から通わせようというニーズが出ている」と藤山さん。
中高一貫の利点は、高校入試がない分、部活や海外研修など「学びの経験値」を積ませやすい。加えて、高校の授業を高2までに終え、高3の1年を大学受験勉強に充てられる。
旧第3学区の府立トップ校出身の男子生徒も「(公立は)高3の2学期になってもまだ授業が続く。難関大を狙うには、そのペースに合わせると間に合わない。このため、多くの友人は授業中に〝内職(受験勉強)〟したり、学校を休んで受験勉強をしたりしていた。その点、中高一貫は得」と本音をもらす。
また、家庭が動く理由は「学力競争」だけではない。一つは、私立の教育が〝早期の環境設計〟として見られていることがある。探究学習や英語、ICT、グローバルや理数に特化するなど特色のある学校が増え、中高6年で育てるカリキュラムは、大学入試改革の不確実さに対する保険になる。
2つ目は地域にある公立校の学級運営に不安を感じる、つまり〝学校が荒れている〟ケースだ。この場合、偏差値よりも「安心して通えるコミュニティー」を重視する保護者も多い。3つ目は共働きの拡大だ。放課後の学習を見てくれるなどの居場所を含め、時間割が厚い中高一貫は強い。藤山さんは「こうしたニーズも裾野を広げる一因になっている」と話す。
一方で、無償化の影響をほとんど受けていないのが灘(神戸市)、大阪星光(大阪市天王寺区)、四天王寺(同)、東大寺学園(奈良)、西大和学園(同)などの最難関校だ。「東大・京大への進学と目的がはっきりしている。最難関校を目指す家庭にとっては授業料負担は二の次」と藤山さん。
とはいえ、高校無償化は中学受験を「一部の家庭の選択肢」から「検討し得る進路」へ押し広げたことは間違いない。大阪の中学受験は今、静かな大衆化の局面に入っている。

