自民310議席、戦後初の独走 改憲へ全権、維新の牙城に風穴

 高市自民党が、2021年の岸田政権以来5年ぶりに「絶対安定多数」(すべての常任委員会で委員長ポストを独占し、委員数でも過半数を確保できる261議席以上)を得た。
 さらに全体の3分の2に当たる310議席に、戦後初めて単独で届く大勝となった。公明との選挙協力があった5年前に比べ、今回は連立を組む維新と全国80カ所以上で競合しながらの勝利だ。数字が意味するのは単なる議席の多さではない。委員会運営を握り、法案審議の主導権を固め、採決の景色すら変える力だ。

 大阪でも、前回は維新が19小選挙区を初独占したが、今回は自民に風穴を開けられた。〝都構想承認〟を狙ったダブル選も白票など無効票が目立ち、熱狂より冷めた空気が残った。「高市一強」と「都構想維新」の明日を眺めたい。

衆院選の開票センターで、当選が決まった候補者の氏名の上に赤いバラを付ける高市早苗首相=2026年2月8日、東京都千代田区の自民党本部(代表撮影/ロイター/アフロ)

党是「改憲」へ 自民一気

何でもできる勝ち将軍

 自民党候補にとって、2年前に少数与党へ転落させた石破茂総理が疫病神なら、結党以来の新記録をもたらした高市早苗総理は勝利の女神だ。高市総理は「二世、地方議員、秘書」の定番コースを歩まず、落選も2回味わった。安倍晋三・元総理を師と仰ぎつつ安倍派に属さず無派閥。最側近〝五奉行〟(木原稔、片山さつき、小野田紀美、黄川田仁志、佐藤啓)も出身派閥がばらばらで、横の連携が薄いという異例ずくめだ。派閥均衡の論理が弱まるほど、首相官邸は政策決定の回路を短くできる。
 勝てば官軍の政界では、新人議員は全員〝高市チルドレン〟になる。来年秋の党総裁選も無投票当選が見え、麻生太郎副総裁や鈴木俊一幹事長ら財務族への遠慮も小さくなる。アベノミクスを下敷にした「サナエノミクス」を掲げ、消費減税を含む積極財政へ舵を切りやすい。裏を返せば、失速した時の責任も一点に集まる。

改憲手順はコレだ

 解散会見で総理は「これから出す法案は賛否が分かれる。だからこそ信を問う」と言った。中身を示さなかった〝賛否が分かれる法案〟の本丸は憲法改正だろう。安倍政権は経済政策を前面に出しつつ安保関連法や特定秘密保護法を成立させたが、改憲は公明への配慮で踏み込めなかった。
 今回はまず「非核三原則」の見直しあたりから入り、改憲論議ではパンデミックや大規模災害に備える緊急事態条項と、自衛隊の位置付け(9条の整理)を国民投票へ持ち込む筋書きが見える。国会での発議には各院の3分の2が要る。だから310という数字は重い。ただし最後は国民投票で、ここから先は「数」だけでは勝てない。
 国際情勢も追い風だ。中国の対日圧力は続き、トランプ政権の米国は防衛も貿易も頼りになりにくい。「自分の国は自分で守るしかない」という言葉が響きやすい。安全保障の不安は改憲の推進力になる一方、生活実感の痛みが残れば逆風にもなる。

大阪維新に風穴ポッカリ

双刃の剣、住民投票

 連立パートナー維新は微増にとどまり、自民との温度差は開く。とりわけ大阪で第19区(泉佐野市、貝塚市など)を小選挙区制導入以来初めて自民に明け渡した衝撃は大きい。前回は自民の比例復活を大阪で1人に抑えたのに、今回は各地で復活当選を許した。壊滅寸前まで追い込んだ自民大阪府連に、復活の足がかりを与えた格好だ。自民側にしてみれば「大阪で立て直せる」という成功体験が芽生え、組織の再編や候補者発掘に弾みが付く。
 原因として重いのは、吉村洋文府知事が都構想の3回目の住民投票を急ぐ手法への違和感だ。出口調査では、横山英幸前市長に投票した層でも賛否は拮抗する。立候補を見送った他党支持層が反対に回れば、慌てて住民投票を打てば否決が透けて見える。国会も地方も離党者が相次ぎ、スキャンダルも増える中、結束の旗印が都構想しかなくなっているのも痛い。三度否決されれば、吉村代表自身の進退に直結する。

どうにも止まらない!

 今後の自維連立はどう動くのか。維新は「自民のアクセル役」を自任するが、「高市一強」内閣は党内も国会も怖いものなしで、アクセル役を必要としない。数の力で押し切れる国会になり、再議決まで視野に入る。スピードが上がるほど、チェック機能の弱体化という不安も同時に広がる。
 都構想実現は総理の胸三寸だ。苦しい時に支えた維新への恩義はあっても、改憲の前の「副首都=都構想」の優先順位は低い。政治とカネや旧統一教会も、選挙のみそぎが済めば過去の話にされかねない。維新の「議員定数削減」「団体企業献金禁止」を今さら聞く義理も薄い。維新は黙って耐え、総理に付いていくしか選択肢が狭い。
 右派の参政党、若者中心のチームみらい、国民民主まで改憲論議に応じれば、護憲左派はさらに押しやられる。高市総理のスローガンは「日本列島を、強く豊かに。」だった。白紙委任状を託した側は、その行く末を見守るしかない。

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