開発止まらぬ大阪 26年以降はミナミに注目

工事が進む西本町駅(仮称)周辺=12月13日、編集部撮影

 大阪・関西万博の閉幕後も、うめきたの全面まちびらき、大阪城東部地区のまちづくり、日本初となるIR (統合型リゾート)など大規模開発が目白押しの大阪。2026年以降は、ミナミに一際明るいスポットライトが当たりそうだ。「なにわ筋線」延伸を軸としたなんば駅周辺の再編、御堂筋の歩行者空間化、心斎橋周辺の再開発など、都市の景色を塗り変える動きが広がっている。 (西山美沙希)

南北移動を変える 「新動脈」

 ミナミの大きな動きをけん引するのが、2031年開業予定の「なにわ筋線」だ。大阪駅(うめきたエリア)とJR難波駅・南海新今宮駅を結び、南北移動を大きく改善する新たな「都市の動脈」と位置付けられている。
 新駅が設置される中之島や西本町からJR大阪駅の地下ホームへダイレクトアクセスが可能になり、南北の移動が格段に便利になる。さらに、都心部と関西国際空港を結ぶ特急「はるか」や関空快速なども同線を経由する計画で、大阪環状線を走る現在よりも所要時間が短くなる見通しだ。
 大阪メトロ御堂筋線、四つ橋線の混雑緩和に加え、関空アクセスルートの利便性向上で、大阪の都市機能がさらにアップデートされることは間違いない。

なんば駅前に ハイアット進出

 ミナミの玄関口・南海なんば駅周辺も再開発が進む。23年秋には駅前ロータリーを歩行者中心に整備した「なんば広場」がひと足早く完成。タクシーや車で混雑していた駅前が、緑地のある広々とした滞在型の空間へと生まれ変わった。多彩なイベントも開催されており、多くの人々でにぎわっている。
 今年春には「なんさん通り」を含む駅周辺全体の再編が完了。歩きやすさが向上し、なんば全体の回遊性が高まっている。
 なんば広場の隣接地では、関電不動産開発、南海電気鉄道、大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)の在阪3社による地上28階・地下2階建ての大型複合ビル「(仮称) 難波千日前地点再開発プロジェクト」が進行中。15~28階に、米ハイアットの都市型ホテルブランド「ハイアットセントリック」が関西初進出することも発表されている。インバウンド需要の高まりを背景に、上質なブティックホテルを備えた新たな滞在拠点が誕生する。
 南海は、なんばターミナルから新今宮・新世界へと続く南北ラインを軸に、にぎわいの回遊空間を生み出す「グレーターなんば構想」を掲げ、まちづくりを進めている。同社まちづくり推進室 開発部の担当者は「なんばの都市格を高める上で、駅前にブランド力のあるホテルを誘致できた意義は大きい」と話す。

「(仮称)難波千日前地点開発プロジェクト」の外観イメージ
「(仮称)難波千日前地点開発プロジェクト」内、商業エリアの完成イメージ

御堂筋を歩行者空間へ

 なんばから視野を広げると、市中心部を南北に貫くメインストリート・御堂筋でも大きな変化が進んでいる。御堂筋開通100周年の37年をターゲットイヤーとする「御堂筋将来ビジョン」では、パリのシャンゼリゼ通りのような、緑を取り入れた歩行者中心の空間づくりを進め、将来的にはフルモール化(完全歩行者空間化)も視野に入れる。
 車線の減少や街路樹の整備など、歩きやすい環境づくりは段階的に進んでおり、沿道ではマルシェやイベントなど道路空間を活用した新たな試みが広がりつつある。
 歩行者中心の空間をめざし、市は御堂筋を森のように緑を感じられる軸へと育てていきたい考えも示している。今後はさらなる緑化の促進やアートを掛け合わせた「公園化」も期待される。「通る道」だった御堂筋は、「人が集う場所」へと姿を変えつつあり、エリアの魅力を一段と高めている。

「(仮称)心斎橋プロジェクト」の低層部=12月13日、編集部撮影
新たなランドマークとして期待がかかる「(仮称)心斎橋プロジェクト」=12月13日、編集部撮影

心斎橋の新たな ランドマーク

 御堂筋の再編と歩調を合わせるように、心斎橋でも大規模な更新が進んでいる。中心となるのが、御堂筋に面した心斎橋駅の直上に26年2月に竣工予定の複合施設「(仮称) 心斎橋プロジェクト」だ。商業・オフィス・宿泊機能を一つにまとめた都市型の複合開発で、地上28階・地下2階建てのスタイリッシュなビルは、心斎橋の新たなランドマークになるだろう。すでに低層部分には高級ブランドの店舗が姿を現しており、御堂筋の美しい景観に花を添えている。
 来年6月には関西エリア旗艦店となる「ザ・ゲートホテル大阪 by HULIC」が開業予定。最上階には、大阪の景色を一望できるルーフトップバーを備える。
 心斎橋ではこれからの開発に期待が高まるプロジェクトが他にもある。ミナミの文化発信拠点として親しまれた、旧東急ハンズ心斎橋店跡地では建物の解体が完了し、現在は暫定的に駐車場として活用されている。将来的な計画は未公表だが、商業施設、宿泊施設、複合開発などさまざまな活用が検討されているだろう。また、26年1月に閉店する心斎橋オーパの跡地も再開発が見込まれている。新たなまちづくりの息吹が今まさに芽生えようとしている心斎橋の動きにこれからも注目していきたい。

2026年1月に閉店する心斎橋オーパ=12月5日撮影、編集部
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