森之宮キャンパス開設、古民家再生、オンデマンドバス実験など。急成長する東部エリアで、住み良さを守る行政の視点
再開発が進み、「ヒガシが熱い」とメディアでも注目を集める大阪市東部エリア。本紙が長年、取材・配布エリアとして親しんできた城東区でも、大阪公立大学森之宮キャンパス開設や交通網の整備が進み、エリアの価値を押し上げる動きが広がっている。「新時代のにぎわいをここに住む人々の暮らしにどう還元するかが大事」と先を見据える、吉村悟・城東区長に話を聞いた。

ー城東区の特徴は
大阪市24区の中でも4番目に人口が多く、15歳未満の子どもの数は市内最多。子育て世代が多く、明るく活気のあるまちと言えます。
交通の便も魅力の一つで、大阪メトロや私鉄など8路線が走り、キタ・ミナミといった大阪都心部をはじめ、JR学研都市線沿線や京都方面へも快適にアクセスできます。JRおおさか東線の開通により、新大阪や今話題の「うめきた」エリアへも乗り換えなしで行けるようになりました。

今年10月からは、大阪メトログループが利用者の希望に応じて運行する予約制の「オンデマンドバス」の社会実験が始まりました。路線バスよりもきめ細かに乗降場所が設置されているため、目的地の近くまで行くことができ、必ず座れることから、通勤・通学やお出かけ、通院などあらゆるシーンでの利便性向上が期待されています。

ー子育て世代が多い中で、特に力を入れている施策は
城東区では、大阪市としての各種事業を着実に進めるとともに、区独自の子育て支援策として「0歳児家庭見守り支援事業」を実施しています。保育士資格を持つスタッフが、申し込みのあった0歳児を育てる家庭を毎月訪問し、体重測定や子育て相談、子育て支援施設等の情報提供を行う取り組みです。1歳以降は、希望に応じて1歳6カ月まで3カ月ごとに訪問します。
核家族化や共働き世帯の増加など、ライフスタイルの変化によって近隣との関わりが持ちにくい家庭もある中、こうした訪問の場は、子育ての不安を感じやすい時期に相談できる機会です。子育て世帯の方からは「安心できる」との声も多く寄せられています。
行政が地域の子育て支援と家庭をつなぎ、0歳から義務教育まで切れ目なく家庭と〝ともに子育てするまちづくり〟を整えつつあります。

ー「ヒガシが熱い」とメディアでも話題だ。にぎわいをどう捉えているか
にぎわいが高まるのは良いことですが、「人々が生活するまち」であるという原点を忘れてはいけないと思っています。地域行政を担う立場として、得られた活気をいかに人々の暮らしにつなげていけるかが重要です。
今年9月、区内に森之宮キャンパスが開設され、注目が集まる大阪公立大学とは、学生が地域のイベントに参加するなど、すでに連携をスタートしています。大学の〝知〟や若い力をまちの活性化に生かす取り組みを進め、行政と大学のそれぞれの強みを生かしながら、まちのにぎわいと人々の暮らしが調和するまちづくりを目指していきます。

ー開発と日常の暮らしが調和という視点は面白い
にぎわいを日常の暮らしに結びつける象徴的な場として、区役所庁舎の存在も大きいです。2016年に完成した市内で最も新しい区庁舎は、最大773人を収容するホールがある区民センターや図書館、老人福祉センターなどが一体となった複合施設です。そのおかげで、平日はもちろん、休日も多くの人々が集い、子どもたちにも広く親しまれている区役所だと思います。


さらに、テレビドラマの舞台にもなった蒲生四丁目駅周辺の古民家再生プロジェクトなど、昔からの暮らしの価値を生かす動きも広がっています。新しい開発と、もともとの地域の魅力。その双方がつながることで、暮らしやすさがより深まっていくと考えます。
ー城東区での暮らしを検討している人に、メッセージを
古い町並みのぬくもりを残しつつ、新しい大学や交通インフラの整備も進む城東区。私自身もこのまちで暮らしており、交通や生活の便利さ、地域を支えてくれている人々の温かさに触れるたびに「住み良いまちだ」と実感しています。今後も、地域や関係機関とともに、誰もが安心して暮らせるまちづくりを進めていきたいと考えています。






