国旗と同じ鮮やかな青と黄色で統一されたコモンズC館にあるウクライナパビリオン。多くの人が無言で手元をみていた。
大変な戦時下にありながら、万博に参加している同国が伝えたいことは「NOT FOR SALE」。
自分たちの大事だと思うこと(価値)やウクライナ人としてのプライドは何があっても売らないし、買わせない、という強い意志を現したのがこのフレーズ。大国の都合に翻弄されかけている状況にも絶対に妥協しないというメッセージだという。
館内では、ハンドヘルドのコードリーダーを受け取って、棚やテーブル上に置かれているブルーのグッズについているタグのバーコードを読み取るとハンドヘルドの中のスクリーンに映像が流れ出す。
戦争の最前線を取材したドキュメンタリー作品がアカデミー賞を受賞したことや、破壊された住宅などを再建する現場で工事の音をかき消すためにDJが大音量で音楽を流して皆を盛り上げている様子、世界の穀倉地帯でもあるウクライナの耕作地や農産物が破壊されている事実とそれに負けずに抵抗していることなど、悲惨な現実を多面的に捉え、静かに、感情を露にすることもなく、しかしかなり強いメッセージを発信している。
ウクライナは負けない、という意志の現れを感じた。
いのち輝く未来社会をデザインするという万博のテーマを考えると、このウクライナの展示は、まさに消し去られそうになっている彼らの生命を未来にどう輝かせるのか、を問われたウクライナの人たちからの回答なのだろう。それが伝わるからこそ、来場者は皆言葉を発することなく、無口でじっと映像に見入り、何事かを考えていたのだと思う。
あなたにもぜひ見て、考えてもらいたい。
また向かいにある展示スペースでは、戦禍でもがんばるウクライナ企業が開発した製品を紹介しつつ、戦禍の悲惨な現実をも伝えている。
説明してくれたスタッフからは、緊張感をはらんだ空気が漂っていた。