▲マイナンバーカードの見本(総務省資料より)
政府が2024年秋にも、現行の紙の健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一体化する方針を発表した。日本はすべての国民が医療費の負担を軽減してもらえる国民皆保険制度の国。このため、マイナカードへの一本化は事実上の義務化を意味する。ただ、申請に後ろ向きな人々もおり、カードの交付率は9月末時点で49%止まりだ。一本化でどのようなメリットが得られるのか。デメリットも含め整理した。
政府の並々ならぬマイナカードの普及へ向けての方針が明らかになったが、カードの交付率が49%と普及が進まないなか、一本化でどのようなメリットが得られるのか。また、紛失した場合、個人情報漏えいの危険はないのか。マイナンバーカードをめぐる今後の動きを見てみると―。
〝デジタル弱者〟への配慮を 最終的にスマホに一元管理
健康保険証とマイナカードの一本化
まず、健康保険証がマイナンバーカードと一体化という方向で調整が進められ、政府は2024年秋にも紙の保険証を廃止する方向に進んでいる。
これまで医療機関では、患者の受診の内容・処方薬などの情報は他の医療機関とは共有していない。薬のことに関してはお薬手帳を使うなど患者自身で説明をしていた。今後マイナンバーカードと健康保険証が一体化されれば、データで共有されることになり、受診内容や処方薬などの情報が自動で他の医療機関と連携することが可能となる。
マイナポイントで普及狙うも
政府は普及率アップを狙って、マイナポイント第2弾として最大2万円分を付与するキャンペーンを行ったが、申請は伸びず12月末まで申請期限を延長した。
実際、マイナンバーカードを申請しない理由を聞くと、「個人情報が漏えいしそう」「手続きが面倒くさい」「持っているメリットを感じない」と回答し、多くの国民に説明が行き届いていない状況がみられる。
「マイナ保険証」の本格導入は21年10月から始まっているが、マイナンバーカードを取得したあとに実際に登録しているのは全人口の約20%と低い。他の先進国では、情報の一元化が進み、日本は極端に遅れているのが現実だ。
新型コロナ禍によって、日本のデジタル化がいかに遅れているかということがあらためてクローズアップされた。海外の先進国家では「カードを持っていないと損をする」ということで普及が進んだ。ソーシャルセキュリティナンバーの紐(ひも)づけが進む韓国では、コロナ禍で給付金を申請したら30分後に入金されたという記録があるが、日本は未だに紙で申請していたからだ。
紛失時の対策あるも国民の理解低い
日本は「持っていればお得ですよ」とポイントを付与する形でやっているが、動きは遅い。やはり加入率が低い背景には、情報漏えいに関する心配の声が多く聞かれる。政府によると、紛失時はコールセンターに連絡すれば24時間365日対応してくれて、カードの一時停止が可能という。そして、不正に情報を読み出そうとすると、ICチップが自動で壊れる仕組みで情報漏えいの心配は低い。それでも国民の間に理解が行き届いていない様子がうかがえる。
世界的にデジタル化社会が進む中、明らかに遅れている日本。最終的にスマートフォンに一元管理ということになる。やはり、取得したくない人に向けては、具体的なメリットや疑問を丁寧に引き続き説明していくことが求められる。新しい制度の導入には、年齢に関係なく素早く順応できない〝デジタル弱者〟も存在するため、慣れない人に対してはきちんと対応することが必要になる。
マイナンバーカード 情報漏えいの心配は?
[紛失時]コールセンターに連絡→24時間365日、カードの一時停止可能
[ICチップ]不正に情報を読みだそうとすると、ICチップが自動で壊れるシステム