【対談シリーズ】競馬のトップ調教師と学習塾代表の滑らない話

JRA栗東トレーニングセンター所属調教師 清水久詞 × 個別指導 キャンパス 代表取締役 福盛訓之

 〝笑う門には福来たる〟。新教育総合研究会「個別指導キャンパス」の福盛訓之代表が、各界の人たちと語り合う。対談シリーズの7人目は、日本中央競馬会(JRA)栗東トレーニングセンター所属の調教師で現在、勝利数が暫定2位の清水久詞さん。

個性に合わせて実力を伸ばすことが大切(清水)
人も馬もコツコツやれば、いずれ大器晩成(福盛)

福盛 清水さんは僕と同じ大阪市城東区の出身で、同じ陸上部だった。しかも学年が一つ違いなので、とても親近感を覚えます。何よりも、子どもの頃から競馬好きだったことが、僕と共通します。


しみず・ひさし
 1972年、大阪市出身。中学時代は長距離ランナーとして陸上部で活躍。日本中央競馬会(JRA)・栗東トレーニングセンターに所属している調教師。98年桜花賞、秋華賞、2000年エリザベス女王杯を制したファレノプシスを担当。09年に調教師免許を取得。JRA通算358勝(うち重賞22勝)。

清水 父親が馬主だったので、土、日曜日になると競馬のテレビを見ていました。さらに、ラジオの競馬実況中継も聞いて育ちました。福盛さんが言う通り、子どもの頃から競馬ファンでした。

福盛 清水さんは騎手を目指すようになり、中学3年でJRA競馬学校の騎手課程の入学試験を受けたが、失敗。その後、親元を離れて滋賀県立栗東高に進み、馬術部に入って再度試験に備えたが、試験当日に体調不良となり、受験を断念した歩みがあるように聞いています。そして、調教師を志すようになるわけですが、その切り替えがとても印象的です。騎手になれなかった悔しさを「ばね」にしたのでしょうか。そうだとすれば、「青春」の1ページを見る思いがします。

清水 子どもの頃から乗馬に通い、馬と接する機会が多く、将来は馬に携わる仕事がしたいと思っていました。特に、騎手になることが夢でした。しかし、騎手になれなかった。これについては自分が悪いのだと思っています。騎手がだめなら調教師だと考えました。

福盛 結果、その調教師で注目を集めておられる。さて、子どもの頃から親しんだ競馬で、印象に残っているシーンは何ですか。

清水 究極の大逆転戦法で知られたミスターシービー(2代目)ですね。1983年に日本中央競馬会史上3頭目のクラシック(皐月賞、日本ダービー、菊花賞)3冠を達成。今でも覚えています。


ふくもり・としゆき
 1973年、大阪市出身。大学在学中の19歳で起業。96年に新教育総合研究会「個別指導キャンパス」(大阪市北区)を設立。個別指導塾を全国約340教室で展開している。第21回稲盛経営者賞第1位、第1回大阪府男女いきいき事業者表彰優秀賞、紺綬褒章など受賞多数。

福盛 ミスターシービーと言えば、最後方の位置からレース後半で先行馬をごぼう抜きする。そのスタイルに僕も引き込まれました。あの突っ込む走りは本当にすごかった。競馬ファンだった僕は中学生の頃、とにかく異色でした。競馬の魅力、醍醐味(だいごみ)について、クラスメートを前に延々と説明するけど、みんな、ぽかーんとした顔で見ている。まったく話が通じていないようでした。今風に言えば、僕は空気を読めない子どもだったかもしれません(笑)。

清水 私は(競馬の話を)控えていましたよ(笑)。

福盛 ところで、清水さんは調教師の免許試験に合格した2009年に厩舎(きゅうしゃ)を開業し、13年たちました。調教師としてのポリシーを聞かせてください。また、清水さんの厩舎は強めのトレーニングを施すと言われています。ハードなイメージを持たれているようですが。

清水 管理馬のキタサンブラックが15年の菊花賞で優勝するなどして、僕の厩舎のハードぶりが注目を集めました。しかし、ハードな調教は「あの馬」だから施したのです。調教師としてのポリシーの質問をいただきましたが、『やりすぎず、軽すぎず』で僕はその馬、その馬の個性に合わせることを心掛けています。

福盛 馬の実力を見極めて調教し、結果を出していく。まさにオーダーメードカリキュラムの「個別指導キャンパス」と同じですね。僕たちはそれぞれの生徒に合わせてカリキュラムや対応法を決めています。このため、生徒が分からないまま授業を進めることはありません。先生が生徒の性格まで把握して指導するため、生徒が質問しやすいのが個別指導キャンパスの特徴です。

清水 その通りですね。個性に合わせて伸ばすことが大切だと思います。

福盛 聞きたいことが他にもあります。厩舎スタッフの育成で心掛けていることは何ですか。

清水 働きやすい環境を整えることです。大事な馬を扱っているため、職場環境はとても重要です。どの騎手が乗っても、この厩舎はきちんと仕上げていると信頼を得なければいけません。調教師だけでなく、その助手の腕で競馬に差が生じることもあります。

福盛 調教師はプロデューサー、助手はディレクター的な要素があるように受け止めました。ところで、競馬を見て疑問に思うことがあります。新馬戦で勝ち上がるが、その後の着順で二桁が続く馬を結構目にします。なぜ、デビューで爆走した後、しぼんでしまうでしょうか。

福盛 僕が管理した馬の中にも1勝で終わって引退したケースがあります。

福盛 やる気がない馬もいるのでは。

清水 います。しかし、休養を取らせると、また元気に走り出すケースもあります。馬も生き物です。人間に置き換えて考えると、理解しやすいかもしれません。

福盛 小中学生の頃は目立たなくても、大人になって活躍する人がいます。馬も大人(4歳)になって覚醒するケースがあり、その姿が人間と重なり合います。大器晩成ということですね。清水さんのますますの活躍を期待しています。本日の対談はとても有意義でした。ありがとうございました。