【投資家記者の勉強会】利上げ中の米国株、なぜ上昇? ただし、油断ならない状況は続く

 米国ではインフレ退治のため、断続的に政策金利の利上げが実施されている。しかし、最近の米国株は若干の上昇傾向があり、読者からも「政策金利の発表時(7月28日)、予想通りに利上げが行われたのに株価(米国全体の指標であるS&P500など)が思ったよりも下がっていないのはなぜ?」という質問を頂いたので解説する。

 結論から言うと、市場はすでにこの情報を「織り込んでいた」からだ。日本ではあまり馴染みがないが、米国の経済指標は常に「予想」が立てられている。つまり予想を裏切る内容(ネガティブサプライズ)であれば、大きく株価が下落する可能性があった。

 しかし、7月28日の発表は市場の予想通りで、逆に高いインフレに対峙する米国・中央銀行(FRB=連邦準備制度理事会)の強い姿勢が支持された形となった。ただし、政策金利を継続的に上げ続けると経済全体が冷え込む危険性があるため、今回に限っての市場判断であることは理解しておきたい。

 最近では、インフレ率を示す消費者物価指数(CPI)が8月10日に発表され、予想した8・7%を下回る8・5%となり、「1年ぶりのポジティブサプライズ」として、その後の株価は上昇傾向が続いている。

 しかし、まだインフレ率は高水準で、ピークアウトの状況にない。ある投資家は「同じような現象(インフレ率低下)が3回(3カ月)連続で起きないと安心できない」といっている。

 今後の米政策金利は、CPI発表前は0・75%と予想されていたが、今回のインフレ率を受けて、「0・5%の利上げにとどまるのでは?」という予想が強くなっている。

 ただし、株価というのは一つの要因だけではなくさまざまな要素が絡み合っての結果であり、8月25日~27日のジャクソンホール会議(※1)、同26日のPCEデフレータ(※2)などの結果次第では、今後の予想が変わることがあるので注意しておきたい。


※1 8月はジャクソンホール会議(8月25日~27日)にも注目。世界中から中央銀行関係者やエコノミスト、市場関係者が集まり中長期の金融政策の議論などが行われる。

※2 CPIと同様に個人消費の物価動向を示す指標。FRBの政策決定はCPIより、PCEデフレータの方を重視しているともいわれている。