【投資3年目 記者の勉強会】今夏、日米株の乱高下はなぜ起きたのか? 長期投資はどうしたらいい?

 乱高下した今夏の日米株。なぜ、7月11日以降から大きく下落し、そして8月5日を底に大きく戻したのか。また、株価が極端に動くとき長期投資はどのようにしたらいいのか情報を集めてみた。

なぜあんなに下落した?

 7月の米国雇用統計で失業率が上昇したことなどが悪材料となり、インフレ鎮静化を飛び越えて、景気後退懸念の思惑が広がった。

 一方、日経平均株価の下落は、もともと米国の影響を受けやすいことと、7月31日にあった日本銀行の金融政策決定会合で利上げが実施され、加えて植田総裁のコメントが、〝今後も数回の利上げ〟を示唆した内容であったためだ。これを受けて、株安だけでなく、ドル円相場も一時、161円から141円の円高へと20円も変動した。

 トヨタをはじめ、海運や総合商社などは輸出による為替差益の影響を受けやすい。当時、主要企業の想定為替レートは145円だった。円高への変動が激しいと、今後の決算に悪い影響が出てしまうのも株安の原因だ。

 結果、日経平均株価は7月11日の4万2000円台を過去最高値とし、8月5日の3万1000円台まで、1カ月も経過しないうちに1万円以上、約28%も下落した。この日本の極端な下げは、アジアや欧米株式市場にも波及し、世界的に株式市場は大きなショックを受け、まさに「ブラックマンデー」となった。

 大底となった翌日の8月6日、少し専門的な経済データになるが、日経平均株価の振れ幅を示す「日経平均VI」は70を、米国の恐怖指数(VIX指数)は65を超えた。この数値は金融ショックや大規模な災害、戦争やパンデミックなど非日常的な事象でしか見られないという。

その後、なぜ急回復したのか

 「株価には先見性がある」といわれている。前述の事象から米国市場は「不況の前兆だ!」と一瞬、パニック状態になっていた。

 しかし、その後に発表された小売売上高が底堅く、7月下旬~8月中旬に発表された米国主要企業の決算で業績変化率がプラス10%程度と、「思っていたよりも景気後退ではなかった」というムードに変わった。

 さらに日本でも、急激に株安・円高になったことを受け、内田副総裁が前回の会合とは違った〝利上げに慎重〟なコメントを追加発表した。これまでの日銀としては異例の急展開だった。

 改めてこれまでの顛末を俯瞰してみると、日銀利上げの0・25%はまだまだゼロに近い数値だし、1ドル145円だってコロナ前の年から10年を振り返っても100円から125円のレンジだったので、今でも〝普通に円安〟なのである。

長期投資している人はどうしたらいい?

 歴史的な暴落を見ると、1989年のバブル崩壊や2000年のハイテクバブル崩壊、2007年の世界金融危機時は約60%の下落だった。

 ニュースで聞く「パニック売り」をする人は、主に短期の信用取引をしている人だと思っていい。信用取引はレバレッジを効かせる、空売りをするために証券会社から「証拠金」を借りて運用する。急激な相場の変動があると借りている「証拠金」が足りなくなるので資金を追加する「追証」や、強制的に決済される「ロスカット」が発生する。つまり、証拠金を借りて急いで資金を増やそうとしていない「現物取引の長期運用」であれば、つられてパニック売りをする必要はない。

 ちなみに、米国指標S&P500で「5%以上の下落局面は平均で年3回、10%以上の調整も平均で1回は発生する」、加えて「20%以上の調整はまれ」といわれている。日経平均株価は約28%の下落だったが、同時期でS&P500の下落は約10%だった。

<過去の暴落メモ 日経平均株価>

▼1989年のバブル崩壊:89年12月の3万8900円台から2年半後の92年8月には1万4000円台へと約63%下落。
▼2000年のハイテクバブル崩壊:2000年4月の2万800円台から、3年後の2003年4月には7600円台まで約63%下落。
▼2007年の世界金融危機:2007年7月の1万8200円台から2009年3月には6900円台まで61%以上の下落。