踏切事故対策に「AIカメラ」 南海電鉄 2024年度以降の本格導入へ

踏切遮断後、AIカメラで滞留している人を検知(監視カメライメージ)
踏切遮断後、AIカメラで滞留している人を検知(監視カメライメージ)

 今月6日、群馬県高崎市の上信電鉄の踏切で、小学生の女児(9)が列車にひかれ亡くなった事故はまだ記憶に新しい。〝遮断機〟と〝警報機〟がない危険な「第4種踏切」と呼ばれる踏切での事故だった。こうした踏切事故が続く中、南海電鉄は、堺市にある「危険な踏切」での事故を防ごうと、運転士に異常を知らせるAIを用いた新たな「踏切滞留AI検知システム」の導入試験を始めた。同社では「導入試験結果を見て、2024年度以降の本格導入を目指したい」としている。

「遮断機」「警報機」ない〝第4種踏切〟で事故多発
AIカメラで事故STOP!

対策を阻む〝2つの壁〟

 国土交通省の統計によると、〝遮断機〟と〝警報機〟のない〝第4種踏切〟は2023年3月末時点で全国の踏切全体の7・4%に当たる2408カ所。総務省の実態調査(21年)によると、第4種踏切での事故発生割合は、100カ所当たり1・02件。第1種踏切の0・59件に比べると約1・7倍と多い。

全国の踏切の種類と数

【第1種踏切】遮断機あり・警報機あり⇒2万9442カ所
【第2種踏切】一部時間帯のみ踏切保安係が操作⇒0カ所
【第3種踏切】遮断機なし・警報機あり⇒592カ所
【第4種踏切】遮断機なし・警報機なし⇒2408カ所

 国の運輸安全委員会も遮断機のない踏切の廃止を求めているが、対策を阻む〝2つの壁〟がある。
 今回事故の起きた群馬県高崎市の上信電鉄の踏切は、21年12月にも事故が起きており、危険性が指摘されていた。なぜ、「第4種踏切」の対策は遅々として進まないのか。
 一つは経済的負担の面だ。遮断機は1機あたり1000万円以上の設置費用がかかってしまう。二つ目は踏切を廃止しようとしても、周辺住民から「不便になる」と存続を求められるからだ。

踏切滞留AI検知システムの概要図
踏切滞留AI検知システムの概要図

目視より早く異常を知らせる

 南海電鉄は堺市にある「危険な踏切」(高野線・中百舌鳥2号踏切=堺市金岡町1477先)での事故を防ごうと、運転士に異常を知らせる「踏切滞留AI検知システム」を設置。この踏切で昨年、「歩きスマホ」をしていた40代の女性が事故に遭うなど、2年続けて歩行者と電車が接触する死亡事故が発生している。

遮断機、警報器のない踏切(イメージ)

遮断機、警報器のない踏切(イメージ)
遮断機、警報器のない踏切(イメージ)

 これまで車は通らず人のみが通る踏切には、障害物検知装置などがなく、警察が対応を求めていた。こうした状況を受けて南海電鉄はAIカメラを使ったシステムを導入。踏切内に取り残された人を検知すると、近くの信号機の色が変わり、目視より早く運転士に異常を知らせられる。
 同検知システムを共同開発したOKIと丸紅ネットワークは「今回の実験では、人道踏切の監視用に既設されている監視カメラを使用することで、新しくカメラを設置せずに済む。簡単かつ安価なシステムの導入が可能になった」としている。AIカメラは今年度中に本格運用される予定という。