【外から見た日本】こんなに違う就活、就職の実態

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏

 もうすぐ、新入社員が社会人として新たな一歩を踏み出す季節。どこの大学で何を学んでいようと、同じ会社へ同時期に就職したら、ほぼ同額の給料で、自分の希望や学歴とは関係なく、会社が振り分けた部署に配属されて、 4月1日から横一線で働き出します。私からみるとこれは就職ではなく、就社です。

 私が大学を卒業したアメリカを含め、世界のほとんどの国では新卒一括採用などというシステムはありません。アメリカでは大学は5月で卒業しますが、12月や8月に卒業することもあり、まず卒業時期がさまざまです。多くが卒業する5月に卒業しても、6月1日から出社するとは限りません。それぞれの会社の事情や、就職する本人の希望などによって、出社を開始する時期はバラバラです。1年間オフを取って、翌年から働くという猛者もいましたが、秋頃までには大体が働き始めます。応募の際は「この企業のこの部署のこの職種に応募する」という形になっています。Aという企業の投資部門の債権担当や、Bという企業のR&D部門の商品開発担当と具体的です。これが就職です。そのため海外で職業ときくと、「証券会社です」とか「メーカーです」という答えは返ってこず、「Trading bonds」や「I’m developing products」という答えが返ってきます。

 仕事を得るための活動はいつでも自由に行えます。多くの大学生は 3 年から4年生になる夏休み(6~8月)にフルタイムのインターンシップをして、自分の能力を示して企業に気に入られたり、実際に業務を体験して仕事を覚える中で、人間関係や企業内の雰囲気も含めて気に入れば、その企業と交渉(売り込み)を行います。最終的にこの企業でなくてもその業界が気に入っていれば同業他社での就職を狙う際にも、このインターンシップの経験は武器になります。面接でどれだけ上手く交渉して売り込めるかで、給料も待遇も変わります。同じ大学から同じ会社に入社しても給料が同じとは限りません。

 私もマンハッタンにオフィスを構えていた頃、大学の後輩にインターンとして毎日オフィスで仕事をして貰っていた事があります。その内の一人が面接に行った企業から、人物照会の連絡があり、「優秀な人材なので雇用する事を薦める」と私の評価を伝えました。それが功を奏したのか、彼女はそのウォールストリートにある投資銀行に就職し、初年度から私の稼ぎよりも高い給料を得たはずです。

 最後に、面接でよくある質問を記しておきます。あなたならどう答えますか? 「なぜ私(企業)はあなたをこのポジションで雇うべきなのか?」答えられなければ不採用です。

【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。