女性起業家特集 ~プレミアムウイメン~ 女性が起業を決断した想い

起業間もない、大阪の女性起業家3人とビジネスコンテストで活躍する高校生を紹介します。

おしゃれママたちのお出かけの〝定番マザーズバッグ〟に

Maonalu 鵜殿友里(うどのゆり)さん

Maonalu 鵜殿友里さん
「品質の良さや、生産者の思いを多くの人に届けたい」と話す鵜殿友里さん

 すでにSNSを中心におしゃれなママたちから注目されている「ヌビバッグ」。韓国の伝統的な生地「ヌビ」を使ったバッグだ。特徴は2枚の布と布の間に綿をはさみ込み、一定の間隔で縫い合わされている。韓国では寝具として親しまれていて、ふわふわとした柔らかな触り心地や家で洗うことができてすぐに乾くので小さな子どもがいるおしゃれママたちの定番マザーズバッグとなっている。

 このマザーズバック市場に打ってでたのが、鵜殿(うどの)友里さんがブランド名「Mao Nalu(まお なる)」でプロデュースする「韓国製ヌビバッグ・イブル」の店だ。前職で商品企画、ECサイトでウェブデザインを経験した鵜殿さんはその後、独自のルートを生かしヌビを製造する創業30年の韓国老舗寝具工場を紹介してもらった。工場を見学すると、「寝具生地を扱っている工場ですので、ベテランの職人さんが一つ一つ丁寧に作り上げ手触り、肌触りの良さ、耐久性、優しい色合いは正真正銘」と既存店との差別化ができると確信を得た。

 国内マザーズバックの市場規模には可能性がある。既存店との競合性では「『品質』『デザイン』、そして『価格』面でも『手にもってもらえる価格帯』がモットーですので、負けない」と自信のほども。現在、バッグの種類は肩掛けもできるトートバッグと日本古来の巾着(きんちゃく)バッグの2種類、色はグレー、ピンク、ベージュ、ブラウンの4色。

 「冬から春の季節は売り上げが順調ですが、夏場はどうしても動きが鈍いですね」と課題もあるが、「ベビー用のラグや寝具の販売も考えています」と将来も見据える。息抜きはカフェめぐり。かつては、Kポップアイドルの追っかけをしていた時期もあったが、「現在は落ち着き、甘いものが好きなので」と笑顔を浮かべる。

■Maonalu(マオナル) https://maonalu.base.shop/

全国で活躍する〝卓球レディース〟に向けて、〝クスッと笑える〟ためになる卓球情報を発信

「卓球レディース」編集長 西村友紀子(にしむらゆきこ)さん

「卓球レディース」 編集長 西村友紀子さん
「卓球ツーリズムで地域起こしに貢献したい」と話す西村友紀子さん

 かつて〝根暗〟と呼ばれた時代があった「卓球」。現在では男女のトップ選手の熱戦映像がお茶の間にも届く。中でも世界的に活躍する女性選手はアイドル並みの人気だ。しかし、一方で気軽に卓球を始めようとすると意外とハードルが高い。

 「確かに卓球の情報は潤沢にあるのですが、まだまだ上級者や男性目線など専門性が高い。気軽に卓球が楽しめる情報を発信したい」。こう話すのは、全国の卓球を趣味とする30歳以上の女性をターゲットにしたウェブメディア「卓球レディース」編集長の西村友紀子さん。

 西村さんは高校時代、卓球部選手だったが、卒業後は卓球とは遠ざかっていた。自身の子どものPTA活動で何十年ぶりかに卓球を再開。そこからハマり、夜な夜なテレビでツアーを見て、遠方の会場でTリーグを観戦したり、地方試合に出たり、お祭り騒ぎのような日々を送っていた。ただ、「今の卓球業界は経験者の私ですら理解が難しいことも多く、大人になってから卓球を始める女性にとって卓球語は外国語に聞こえるんじゃないか」と感じていた。

 そんなとき、友人から「情報発信を仕事にしようよ」と誘われ、大阪産業創造館が主催する起業プログラム「立志庵」で学び、講師、そこで学ぶ受講生、友人らのアドバイスを生かして2021年4月、ウェブメディア「卓球レディース」を立ち上げた。

 本格的な技術や用具、腕前(成績)よりも男前のメンズ情報やウェアのコーディネート、掛け声にまつわる小話などクスッと笑える情報を掲載。また、「会場近くの旨い店」「温泉卓球ができる宿」などコンテンツも充実し、タイアップ広告も増えている。今後は「温泉×地域×卓球」をパックにした地域起こしや卓球ツーリズムを各自治体に提案したいという。

 卓球スタイルは「前陣速効型」という西村さん。〝ゆる~い〟プレイヤーにも刺さる情報を発信している。

■卓球レディース https://takkyuu-ladies.com/

出産の〝まえもあとも〟全ての女性のためのピラティススタジオ

CTEN 西山夏実(にしやまなつみ)さん

左から西山さん、井上さん スタジオと併用できるアプリも開発中
左から西山さん、井上さん スタジオと併用できるアプリも開発中

 助産師として800人以上の出産に立ち会った西山夏実さん。その貴重な体験から産前産後に伴う高血圧や糖尿病などの合併症で重篤(とく)なケースでは、母児の命に関わることを知った。
 「妊娠・出産は命がけであることを目の当たりにし、少しでも産前産後を安全に過ごすために適切な運動の必要性を感じました」。

 そんな思いから「気軽に今のカラダやココロの悩みごとを相談してもらえたら」と日本で唯一の産前産後に特化したピラティススタジオ「maemo atomo studio」を吹田市で開業している。大阪大学大学院医学系研究科健康スポーツ科学講座スポーツ医学教室に在籍し、「妊娠中の身体活動と産科合併症の関連」について研究にも従事し、「大阪大学発ベンチャーを目指し、研究室と共同しながら研究の社会実装を行っています」。大学からの友人で同スタジオマネジャー、井上麻里子さん(助産師・看護師)も大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科リハビリテーション学専攻在籍。「運動効果の科学的エビデンスを研究・検証しながら、適切な運動を提供しています」と2人は口を揃える。

 インストラクターは全員が医療資格(助産師・理学療法士)を所持。さらに産婦人科医、整形外科医の医療者がチームとなって、ライフステージを医学的視点からアセスメントし、レッスンでは、臨床経験と学術的な知見を生かしている。

 西山さんは「取り組むエクササイズは、同じようなライフステージにある方と一緒に不安な気持ちを抑え、前向きな気持ちをサポートしています」と一人一人の身体をみながらオーダーメイドでエクササイズメニューを提供。ユーザーは「妊娠~出産」まで平均4カ月、産後も体型戻しなどのリカバリーで75%が1年間継続している。

 今後はさらに将来を見据えて「studioだけでなく、より多くの方が適切な運動を取り入れられるように2026年までに全国で50店舗を目指して女性の社会進出や少子化対策への貢献をしたい」

■maemo atomo studio 江坂スタジオ 吹田市広芝町4-34江坂第一ビル501号室

高校生の日々の暮らしから誕生した〝SDGsな容器〟「ノンレフコン」

大阪府立三国丘高等学校 ノンレフコン

左から阿部美優さん、赤木広子さん、西釋(ずみ)舞さん、東浦優果さん
左から阿部美優さん、赤木広子さん、西釋(ずみ)舞さん、東浦優果さん

 SDGsが叫ばれる中、同校は教育の一環としてソーシャルビジネスプランの作成に取り組んでいる。

 「日焼け止めの容器がしぼりきれないというのが、いやだなあと。そもそもごみとしても環境にもよくないのでは。ケチャップだったら両親からも意見が聞けると思いました」。こんな高校生の日々の暮らしの中から生まれたのが、「最後まで使いきれる」注射器の構造を応用した容器「ノンレフコン」だった。

 SGH研究主任・田中洋平教諭の「お互いがたりないところを補い合うのが理想」とクラスに関係なく、阿部美優さん、赤木広子さん、西釋(にしずみ)舞さん、東浦優果さん=いずれも高校2年=の4人が同じチームとなった。

 まず、考えたのは「容器だとどうしてもプラスチックを考えてしまう。でも、今の時代にプラスチックってどうなんやろう」。メンバーらは生徒・先生、両親、OBにも協力を求め、さらに学校からSDGsアクションプランの海外研修(フィリピン)での成果も生かして試行錯誤を繰り返しながらビジネスプランは完成した。

 ノンレフコンはオリジナルの仕組みで、ケチャップだけでなく将来はハチミツなど他の調味料、食品以外にも日焼け止めクリーム、ハンドクリーム、シャンプーといった、美容用品への横展開も狙う。そして容器は廃棄や飼料になる米を使い、素材にもこだわることで「石油系のプラスチックを減らせ、CO2の排出削減にもつながる」とSDGsへの配慮も忘れていない。

 このビジネスプランは日本政策金融公庫(日本公庫)が主催する、第11回「創造力、無限大∞高校生ビジネスプラン・グランプリ」で「ビジネスプラン・ベスト100」に選出された。メンバーらは「全然違う意見が出ることが多いが、確かにそういう見方もあるなあと、発見した」

 「自分が間違っていてもまわりのみんなはそれいいねとか言ってくれる。このチームの雰囲気があったからこそ、プランのブラッシュアップができた」と振り返る。
 個性豊かな4人で結成されたノンレフコン。将来の夢も〝4人4様〟で楽しみだ。