
街を歩くと、紫外線や酸性雨、風塵にさらされながらも、美しい外観を保つ電車やバス、ビルの外壁、看板などを目にする。そうした景観の維持を支えているのが、コヤノ(大阪市都島区、小谷野達雄社長)が開発したフッ素系表面保護剤「コヤフロン」だ。
コヤフロンは、さまざまな素材に施工できるフッ素系表面保護剤で、ビル外壁やホテル、公共施設、鉄道車両のほか、一般家庭の浴室や家具、キッチンなど、屋内外を問わず幅広く採用されている。
導入先には遠州鉄道や天竜浜名湖鉄道(ともに静岡県)、近鉄電車、オランダ総領事館の公用車、NTTのビルなどが名を連ねる。施工時には素材表面を傷めることなく汚れを除去しながらコーティングを施すため、防汚性や撥水性を高めるほか、細かな傷が付きにくくなる効果も期待できる。塗装面や素材の長寿命化にも寄与している。
製品名の「コヤフロン」は、小谷野の「コヤノ」と「運(ウン)」を組み合わせた造語。「運に恵まれるように」との願いが込められている。
同社の前身である豊中製袋工業所は、足踏み式加工機を開発し、チキンラーメンの包装袋を多い時には1日約1000万枚規模で製造した実績を持つ。一方で、自社技術の盗用被害や保証人となったことによる約1億2000万円の負債など、経営上の苦難も経験した。
そうした経験から、小谷野氏は「運」と「徳」の大切さを痛感し、社会奉仕活動に力を注ぐようになった。骨とう品収集を趣味とする同氏は、その一環として大阪市の本社と兵庫県西脇市に美術館を開設。西脇館は国の登録有形文化財、兵庫県指定景観形成重要建造物にも登録されている。企業活動を通じた地域文化の振興にも取り組んでいる。
「後継者を育てながら、まだまだ第一線で頑張りますよ」
そう話す小谷野氏の表情は終始明るい。85歳となった今も新たな挑戦への意欲は衰えず、長年培ってきた経験と信念を胸に、経営の最前線に立ち続けている。(宮﨑博)

