Spyce Media LLC 代表 岡野 健将
6月27日に行われた大統領討論会で、バイデン大統領が醜態を晒して問題になっている。このままではトランプ元大統領に勝てないということで、民主党は急激に彼を候補から下ろして別の候補を立てようとしている。
これまで1988年から10回の大統領選挙の討論会を見てきたが、今回の討論会はダントツで悲惨な内容だった。政策や政治的信条などの話はほとんどなく、嘘(うそ)と誇張、相手への攻撃だけで終わってしまった。その上、バイデン大統領のあの姿。
討論会を中継したCNNは左寄りのメディアで、基本的にバイデン支持。そのため一人が話している際は、相手のマイクの音量はオフにしていたり、会場は無観客でバイデン有利な設定だったにも関わらず、討論会後、バイデンの健康問題をさも知らなかったかの様に、専門家や民主党の重鎮たちは慌てふためいた。国民へのアンケートでも「バイデンではだめだ」という声が高まっているが、本人は一貫して辞退を否定している。
討論会の3時間後に接戦州の1つであるミシガン州シカゴ市で、15人の市民を集めて感想を聞いたあと、今投票するならどっち?と質問をすると、バイデン7票、トランプ7票、未決1票だった。これはメディアで騒いでいる専門家や民主党の重鎮の態度とは異なる結果かもしれない。
アメリカには岩盤支持層というものがあり、彼らは何があっても支持を変えない。あの醜態のあとでもバイデンが30%以上支持されているのはそのためだ。
そして、浮動票が勝負の分かれ目なのだが、あのバイデンの姿を見ても判断がつかない層がかなりおり、一方的にトランプに雪崩を打って流れないのは、それほど多くのアメリカ人がトランプを嫌っているから。何としてもトランプを大統領にしてはいけない、と思っている人がいかに多いかが如実に現れている。
認知能力や心身の機能に問題がありそうな81歳の老人と、常識が通じないやりたい放題で嫌われ者の77歳の老人のどちらかを選ばなければならないというのは究極の選択だ。仮にバイデンが辞退したところで、トランプに勝てる候補がいるかと言えば、それも大きな疑問。最有力の副大統領カマラ・ハリスでは到底太刀打ち出来ないのは明らか。
また、多くのアメリカ人にとっては、インフレ対策、経済問題、移民問題、中絶の是非、社会保障など身近なトピックが最重要課題だが、アメリカ大統領を決める選挙ともなると、他にもさまざまな事を考えないといけない。その中にはこういった専門家のコメントも含まれる。
「あのバイデン大統領が、プーチンや習近平と電話会談をしたり、アメリカ人を人質に取っているハマスの代表と交渉する姿が想像出来ない。プーチンや習近平、金正恩があの姿をみて何を考えるか、を想像しただけで怖い。仕掛けるならトランプが大統領になるまでの6カ月間と思うかもしれない」
「討論会の後、具体的なテロの危険性が高まったため、ヨーロッパにある全ての米軍基地は最高レベルの警戒態勢が敷かれている」
「トランプは民主主義を破壊すると言う人がいるが、討論会の結果をみて、バイデンを民主党の代表から外そうとする事は民主主義に反するのではないか?少なくとも共和党は、34の罪で有罪判決を受け、モラルがなく、差別を助長しているトランプを候補者から下ろそうとはしていない」
アメリカの大統領が誰になるか、で世界の情勢が大きく変わる可能性があることは忘れてはならない。日本の総理が誰になろうと世界情勢に大きな意味はないが、アメリカの大統領の場合、そのリーダーとしての重責が違う。それを考えると、なおさらあの認知能力や身体能力に疑問を投げかけられている人物に、24時間体制で対応しなければいけない激務を任せて大丈夫なのかと思ってしまう。
今後の4年間でバイデンの認知能力は現状維持出来ればいいが、通常は低下して行く事は間違いないので、これはかなりシリアスな問題だ。
バイデン大統領が民主党の候補者として選挙戦を戦い続けるのか、今後も注目して行きたい。ただ、今のままだとトランプが自爆しない限り、投票日には地滑り的な勝利を手にするだろう。