【わかるニュース】収縮する日本の将来は? 少子高齢化脱却の妙案はコレだ


▲「日本では移民はもちろん難民受け入れなどでのハードルが高い」と訴える外国人

 前回のテーマ「グローバリズム(国際協調)かナショナリズム(自国中心)か?」で試金石だったフランス大統領選は、現職マクロン大統領が再選され、EU(欧州連合)一体の原則がかろうじて維持された。

 では日本はどうだろう?小泉総理以来の市場開放と民営化によるグローバル化の波は安倍総理のアベノミクスへと引き継がれ、その間の〝負の遺産〟とも言うべき急激な円安と長い所得低迷で、国際的地位の低下につながった。日本独自のナショナリズムは起こりうるのか?

無限経済成長 もう時代遅れか!?構造改革とアベノミクスの後始末は深刻

定住できぬ外国人労働者

 日本は戦後ずっと経済成長を続け、20世紀末は不動産投機に沸いたがバブル崩壊で失速。以後約30年間は一向に浮上していない。少子高齢化で個人消費が停滞したままの日本で、経済成長を前提とした計画自体の実現性が極めて薄くなった。日本社会は少子高齢化だけでなく低賃金と技術開発行き詰まりが広がる三重苦状態。労働人口減少カバーに日本の外国人労働者はコロナ禍前には一時過去最多の172万人に達した。米国などではこうした人々が定住し家族が増やして移民人口になるが、日本では移民はもちろん難民受け入れなどでの国籍取得ハードルが高く人口減少の歯止めにはなっていない。

 日本経済は内需中心なので労働者給与が上がらなければ景気は絶対よくならない。将来不安から日本の世帯貯蓄は既に総額2000兆円近くに達するが一方で「貯蓄ゼロ」世帯も2割あり格差が広がり続ける中で、新自由主義経済に基づく自己責任論が低所得者を苦しめている。日本を米国型の極端な弱肉強食へと向かわせてはならない。

進まぬ岸田式〝富の分配〟

 昨年就任した岸田総理は「新しい資本主義」を打ち出し、果実の分配を強調。これはアベノミクス下のトリクルダウン(もうけた富裕層から低所得層への利益再分配)がうまくいっていない証明でもある。岸田政策の柱は①株売買利益への課税強化②排出量に応じた炭素課税③中間層への分配だが、①②は経済界が反発し事実上とん挫。総理も露骨な「安倍否定」はできないから目立った〝格差解消〟は進んでいないが、7月参院選を前に高騰 ガソリン代への補助金など〝弱者救済〟に懸命だ。

 岸田総理は内心アベノミクス失敗を十分認識している。柱となった①ゼロ金利②円安③成長戦略のうち、①②が昨今の急激円安を呼んでいるからだ。さらに③も中身空っぽ。民営化失敗例は、JRや日本郵政の現状を見ればよい。JRは収支均衡へ地方路線を次々廃線、コロナでは利用者の声を無視して運行本数の大幅削減を発表した。日本郵政はもっとひどい。郵便事業は値上げと集配減、かんぽ事業はでたらめ勧誘発覚、貯金事業はスマホ決済でのトラブル続出、と国民の重大インフラをすっかり弱体化させた。

 最近の政界は政権与党に対し、労組代表「連合」や野党・国民民主党が急接近。野党でも与党でもない「ゆ党」と呼ばれる日本維新の台頭など一極化が進行。その中で何かと〝目のかたき〟にされがちな日本の公務員だが、人口比で見ると米国は2・5倍、OECD(先進38カ国)3倍、ノルウェー5倍と実は日本の方が断然少ない。特に地方公務員が足りず、コロナ禍での対応遅れが各地で露呈。行政実態はすべて中央官庁の上意下達。今や労働者の4割が非正規という雇用不安定状態を解消するためにも、地方公務員充実が危機管理の点からぜひ必要だ。

 上場企業はまず米国式株主利益中心主義を止め、江州商人に伝わる「三方よし」(買い手・売り手・世間)精神に立ち戻ろう。株主利益だけを優先した経営者が膨大な内部留保金を抱えたがるから、労働者賃金がいつまでも上がらない。会社は①透明性向上②年功序列見直し③男女賃金格差是正④女性管理職登用だけで十分活性化できる。加えてコロナ禍で一般化したリモート勤務を組み込めば、地方人材確保への手助けにもなる。

急激円安に無策日銀

 今のままでは日本社会は「円安」につぶされてしまう。日銀黒田総裁は念願だった〝2%インフレ〟が実現できるだろうが、それはアベノミクスの成果ではない。賃金が低いままで、ウクライナ侵攻による原油や小麦の急騰による広範囲の物価高だから国民にとって「悪いインフレ」だ。

 対ドルの為替ルートは小泉時代からどんどん円安に振れ自動車などの輸出産業主導で米国などをもうけさせた。この間国内の電気など主要産業はアジア勢の中で没落、ほぼ100%輸入に頼る原油や天然ガス、石炭はどんどん上がり消費者をしめつけている。輸出物価基準に照らせば「1ドル70円が適切」と出ているから、現状はほぼ半額のたたき売り。逆に輸入品は倍額で買っていることになる。

 まずは「悪い円安」から脱却すべきだが、先に利上げに動いた米国に対抗して日本が同調したくても、乱発し続けた膨大な国債の利払い増を考えると動きたくても動けないのが現状だ。

成長神話見直そう

 今世紀末には日本の総人口は5000万人程度に半減する。何度も言うが少子高齢化の国にバブル再来はないし経済成長もしない。目標数字を作ってGDP(国内総生産)で測ること自体が時代遅れに。「エンドレス経済成長」の迷信はもう止めよう。例えばアパレル業界は年間40億点もの衣料品を生産しているが10~15億点は売れ残る。仮に30億点としても1人当たり年間25点買っていることになる。本当にそんなに必要なのか? 身の丈を小さくし「必要ない物は作らない、買わない」という姿勢も必要だ。

 2016年から日独仏は長期金利ほぼゼロ。つまり「金を借りてまで投資しても回収の見込みはない」飽和状態の国、という意味だ。英国はさらに一歩先を行っており、膨大な借金で財政ピンチとなりIMF(国際通貨基金)から緊急支援を受けている。

 今後の日本は極力無駄な支出を防ぐ必要がある。コロナ禍で分かったオンライン勤務の利便性を考慮すると、東海道リニアや地方空港などの公共事業による過剰な新規インフラ整備も思い切って抑制すべき。

 これからの日本は、人々が各地に分散し住勤接近で『個』を重んじる社会へと変貌する。そうした将来像をちょっと立ち止まって考える時だ。