【外から見たニッポン】日本はそんなに住み難い国なのか?

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏
【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。

 先日、大谷翔平が1000億円越えのとんでもない契約をしました。アメリカは継続的に経済が成長し、人口も増加、時給2000円越えのアルバイトも多数あるとニュースなどで報じられています。それに引き換え日本は、経済が成長している実感なく、人口は減少期に入り、アルバイトの時給は最低賃金レベルでのせめぎ合いから脱出出来ない。失われた30年と言われ続け、その間経済も収入も増えずに来ました。そんな停滞感いっぱいの日本に海外から観光客が大挙して訪れているのはなぜなのでしょう?彼らは一様に口をそろえて「日本は良い!サイコー!!」と言っていますね。

 その理由は、まず安全であること。日本人にとって今の日本は過去と比べると安全ではなくなってきているのかもしれませんが、世界レベルで見ればまだまだ超安全な国です。殺人事件がニュースにすらならない国もあれば、銃やドラッグが蔓延しすぎて問題視すらされない国もあります。

 ほかにも街が奇麗、人に親切、時間に正確など、私たちが普段何気なく享受している事を「すごい事」として評価してくれています。経済的な面で見ても、外国人にとって日本は物価が安く、安定していて、それでいて購入するモノやサービスの品質が高いと、とても高い評価をしています。

 街が昔ほど奇麗ではない、人も不親切になっている、物価は上昇し生活は苦しい、粗悪な製品などが増えた。こんな事を思っている日本人が多くいるのかもしれませんが、今自分がいる場所から一歩引いてもう少し広い視点で現状を見つめてみると、そこまで悲観する事態ではないのでは、と思えるかもしれません。

 日本では30年以上収入が増えなかったのに、生活して来られた。それも生死を気にしなければいけない程厳しいものではなく、快適ではなかったのかもしれないが許容できるレベルで暮らしてこられました。今も、年間数千万人の訪日外国人が褒めちぎってくれる素晴らしい社会や文化、歴史や精神性を持ち、経済的にも世界第3位のGDPを維持し、世界最高レベルの安全な社会で暮らし、義務教育どころか高校進学率も9割を超えています。そのうえ、国民のほとんどが充実した社会保障制度から多大な恩恵を受けて日々を過ごしています。

 どこにいても何をしていても、与えられた環境や状況に不満を抱く事はできます。しかしそれでは決して楽しくもなく幸せにもなれません。現状の中にも良い事はあり、それを見いだしポジティブに捉えて行くだけでも、日々の生活や見える世界は変わってくるはずです。たかが観光客の感想だ、としても、それが数千万人の声だとするとそれは聞く耳を持つべき内容なのではないでしょうか?

 あの頃は良かった、というのは自由ですが、あの頃はもう戻ってきません。あの頃より今の方がいいぞ、未来はもっと良くなるぞ、と思って、日々を過ごせば、今の日本にはそう信じられるだけの要因がある事に気付くはずです。

 この国はまだまだ捨てたものではない。そう思える日本人が増えると、自然と社会自体にも活力が生まれ、全てがより良い方向に向かって動き出すはずです。2024年はそんな1年にしていきましょう!