大阪中之島美術館(北区)の5階展示室で「新時代のヴィーナス!アール・デコ100年展」が10月4日~2026年1月4日の間、開催されている。

大阪万博開催の今年からちょうど100年前、フランス・パリでは、芸術史上極めて重要な「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」、通称アール・デコ博が開催された。

「新時代のヴィーナス!アール・デコ100年展」はこの博覧会開催から100周年を記念して開催する「アール・デコと女性」をテーマとするもの。
女性が描かれた、フランスを中心とするヨーロッパのグラフィックデザイン作品100点以上と共に、女性と関わりの深いジュエリー、香水瓶、ドレス、車など、100年前のこの時代を象徴する数々の貴重な作品や資料を展示しているので、アール・デコの女性の姿とそのデザインの一端を垣間見ることができる。
また、100年前のこの時代にヨーロッパでは女性が社会へ進出し、男性と張り合うという動きが世の中に起こっていたことが、様々な作品の中から伺える。
同展覧会では、女性を「ヴィーナス」と称して讃えており、彼女たちの華やかなライフスタイルや生き方を捉えたポスターやデザイン、イメージと重なるジュエリーや自動車などが展示されている。
第1章ではアール・デコ博が開催された経緯や当時の社会状況などが紹介され、女性の社会進出を捉えたポスターやデザインに注目が集まっていった。


第2章では自動車が普及し始めたタイミングと重なり、クールな女性とカッコイイ自動車の組み合わせや船や鉄道などとの組み合わせで女性のアクティブな様子が伺える。また、この頃、女性が自動車などの購入に影響力があることをマーケティングサイドが認識し出したという背景も影響して、女性を広告塔にすることが増えていった。


第3章では女性のファッションにフォーカスが当てられ、衣装だけでなく、宝石やアクセサリー、バッグや香水瓶などに注目が集まり、それらを取り上げたデザインが巷にあふれる時代になっていった。




第4章では仕事とレジャーということで、働く女性の姿やレジャーとしてスポーツなどを楽しむ女性に注目が集まり、そのファッションや持ち物がより一層取り上げらえるようになる。


第5章では個に視点が向き、当時劇場で大人気だったムーラン・ルージュの主演女優のミスタンゲットが大きく描かれたポスターが人気を博したり、グラフィックデザインを活かしたポスターを製作していたデザイナーが持てはやされたりした。

第6章ではヴィーナスたちが憧れたニューヨークの摩天楼や煌びやかなジュエリーを紹介し、アール・デコ様式がフランスで発展してアメリカに影響を及ぼし、その結果が高層ビルなどに見られた。


そしてアメリカで一度完成した後、再びフランスへ戻って逆に影響を与えるという循環が短期間で起こった。
最後に、特別章として、大阪にあるアール・デコ時代の建築を紹介するパネルが展示されている。全部で10カ所の建物があり、どれも大阪人なら名前を聞いたことがあるような有名なものばかり。





当時の大阪は「大大阪」と呼ばれ、日本で一番人口の多い都市だった。この機会に各所を巡ってみては。
一般は当日券が2000円で、前売券および団体料金は1800円。高校生・大学生は1600円(団体1400円)、小中学生は600円(団体500円)となっている。