大阪IR、政府認定 日本初のカジノ施設、29年秋冬の開業目指す

夢洲全景=大阪市港湾局提供
夢洲全景=大阪市港湾局提供

 カジノを含む統合型リゾート(IR)について政府は、大阪府と大阪市が申請した整備計画を認定した。全国で初めての認定で今後は、施設整備に向けた手続きなどが本格化する。最短シナリオでは2029年秋~冬にも国内初のIRが大阪で開業する見通しだ。今回の統一地方選で、大阪府知事・大阪市長のダブル選と府議選、市議選の「4重選」で大阪維新の会が完勝したことも追い風になった格好だ。計画によると、年間約2000万人の来訪者を見込む。初期投資額は約1兆800億円で、日本最大規模の国際会議場の整備方針や、2025年の大阪・関西万博以後の関西経済のけん引役としての効果を政府は評価した。一方で建設予定地である人工島「夢洲」で液状化のリスクや土壌汚染が判明し、府市の対応が急がれる。

夢洲 液状化リスクや土壌汚染が判明

 大阪の整備計画は2029年の開業をめざしている。大阪湾の人工島「夢洲(ゆめしま)」にカジノ施設や国際会議場などをつくり、年間の来訪者数は約2000万人を見込む。同地へは大阪メトロ中央線が延伸され、「夢洲駅(仮称)」が新設の予定だ。費用は初期投資でUSJの7倍の約1兆800億円を見込む。計画が認定されたことで、カジノ免許付与などの手続きが進めば、日本で初めてのカジノ施設となる。

大阪府と市が大阪湾の人工島・夢洲で計画するカジノを含む統合型リゾート(IR)のイメージ図=MGM提供
大阪府と市が大阪湾の人工島・夢洲で計画するカジノを含む統合型リゾート(IR)のイメージ図=MGM提供

初期投資で約1兆800億円、関西経済への波及効果期待も

次々に撤退

 IR実施法では、認定地域の上限を3カ所と規定。ただ、政府が21年10月~22年4月に申請を受け付けたところ、横浜市や和歌山県でも計画はあったが、反対運動が起こりいずれも撤回された。実際、計画が提出されたのは、大阪と長崎の2カ所にとどまった。大阪と同時期に申請していた長崎県は佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」の敷地内に誘致する計画を出していたが、認定は継続審査となった。

雇用促進

 大阪IRの事業者は大阪IRという民間企業で主要株主のオリックスとラスベガスの米MGMリゾーツ・インターナショナル日本法人が40%ずつ出資。残りの20%を関西電力やパナソニック、JR西日本、近鉄グループ、JTBなど20社が出資している。同企業連合や大阪府市が政府に提出したIRの整備計画によると、建設関連などの初期投資額は約1兆800億円にのぼり、開業後の年間売上高も約5200億円、近畿圏での経済波及効果は年間1兆1400億円、雇用は1万5000人が見込まれ、巨額投資は関西経済の押し上げにつながる。

「課題に正面から 向き合い確実に」

 一方で人工島「夢洲」で液状化のリスクや土壌汚染が判明し、その対応が急がれる。と同時にギャンブル依存症のリスクも指摘されている。この依存症にはまった日本人で最も有名なのは、まだ記憶に残る大王製紙の創業家出身の元会長の井川意高氏。井川氏は自身の著書で「カジノで106億8000万円を溶かした」と述べている。

 今回の大阪での統一地方選でカジノを含む統合型リゾート(IR)の推進の是非を争点にあげた維新が圧勝した。有権者は「維新政治の継続」を選択したが、IR誘致の共同通信の出口調査では賛成(52%)、反対(45%)と拮抗している。

 吉村洋文知事(大阪維新の会代表)は選挙結果について、「IRを進めていくことについては一定の民意を得られたと思っている。ただ反対の声があるのも、ギャンブル依存症対策などの課題を懸念する声があるのも事実。反対派の声も聞きながら、課題に正面から向き合い、着実に進めていきたい」とした。