元消防士という異色の経歴を持つアーティスト、西坂真美さん。かつて命と向き合う現場に立っていた彼女が、いま描いているのは、静けさの中に時の流れを感じさせる空と海だ。「一瞬を大切にしたい」そう思うようになったのは、忙しさに追われる日々の中で、立ち止まる余裕すらなかった頃の体験があったからだという。
彼女の作品は、旅先で目にした風景を描くことが多い。空や海、街並みや山々など、暮らしに寄り添うモチーフを、油彩やアクリル、ジークレなど多彩な素材で描いている。色彩の重なりや余白の扱いを通して、風景の奥にある時間や感情のゆらぎを静かに伝えてくれる。

5月28日〜6月10日まで、髙島屋大阪店3階(大阪市中央区難波5)のイベントスペースで開催される企画展に、彼女の作品が出展される。今回は、沖縄・関西・島根など、作者の人生に影響を与えた土地を題材にした新作が並び、人と風景のつながりを感じ取れる工夫が施されているという。
会期中は本人も在廊予定で、「もっと人に会って話したい」と語る。作品を見た人の感じ方に耳を傾け、自身の知見も広げたいという。作品に込めた思いや、描くに至ったエピソードを、作家自身の言葉で聞ける機会になりそうだ。